物価高が続くなか、食料品にかかる消費税をどうするのかが、改めて議論されています。
現在、社会保障国民会議では、食料品の消費税率を0%または1%に引き下げる案などについて議論が行われています。
一方、事業者の消費税については、インボイス制度に関連して、2026年10月から免税事業者等からの課税仕入れについて控除の割合が80%から70%へと見直されます。
また、2割特例についても、一定の個人事業者については、2027年分・2028年分の申告から「3割特例」が適用されます。
つまり、消費者の負担を軽減するために「消費税を下げる」という議論が進む一方で、事業者の側では、インボイス制度に関連して仕入税額控除の縮小や特例の見直しなど、消費税の負担が増える方向の制度変更が進んでいるのです。
今回は、この二つの動きを消費税という一つの税の問題として考えてみたいと思います。
食料品の消費税は0%か、それとも1%か
現在の消費税率は原則10%ですが、飲食料品については軽減税率が適用され、8%となっています。
これをさらに引き下げ、食料品の消費税率を0%にする案が議論されてきました。
2026年6月には、社会保障国民会議の実務者会議で、2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%とし、所得に連動した給付を組み合わせることで実質的にゼロにするという議長案も示されました。
政府は7月中に議論を取りまとめ、8月上旬をめどに方針を決定する考えを示していますが、反対意見もあり、現時点ではこうした案に一本化されるかどうかは見通せない状況です。
食料品の消費税を引き下げれば、消費者にとって分かりやすい負担軽減策となります。一方で、財源をどうするのか、外食との税率差をどう考えるのか、減税分が本当に販売価格の引下げにつながるのかなど、さまざまな課題もあります。
消費税は単純に税率を下げれば終わる制度ではなく、税率の変更は事業者の価格設定や取引関係にも影響を及ぼします。
インボイスの経過措置は10月から「7・5・3割控除」へ
こうした議論とは別に、2026年10月から、インボイス制度に関する重要な変更が行われます。
インボイス制度では、原則として、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの仕入れについては、仕入税額控除を受けることができません。
ただし、制度導入後の急激な影響を緩和するため、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
この経過措置は、2026年10月1日から70%控除に縮小され、その後も50%、30%と段階的に縮小され、2031年10月以降は控除できなくなります。
いわゆる「7・5・3割控除」です。
これにより、免税事業者から仕入れを行っている課税事業者は、仕入税額控除できる金額が徐々に減少することになります。
そのため、今後は取引先がインボイス発行事業者であるかどうかを確認するだけでなく、免税事業者との取引について、価格や取引条件をどうするのかを検討する必要性も高まります。
小規模なインボイス発行事業者にも特例の見直し
インボイス制度の導入によって、それまで免税事業者だった小規模な事業者がインボイス発行事業者となり、消費税の申告・納税が必要となるケースも増えました。
こうした事業者の負担を軽減するために設けられたのが「2割特例」です。
2割特例では、売上げに係る消費税額の8割を差し引くことで、納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができます。
この制度も時限的な措置ですが、2026年度税制改正では、この2割特例についても見直しが行われ、2割特例の適用を受けていた一定の個人事業者については、「3割特例」として、2027年分・2028年分の申告においても適用できることとされました。
つまり、インボイス制度をめぐっては、免税事業者から仕入れる課税事業者に対する「仕入税額控除の経過措置」が段階的に縮小される一方、インボイス発行事業者となった小規模事業者に対する「2割特例・3割特例」についても、適用期限を意識する必要があります。
インボイス制度の導入時には、事業者への急激な影響を避けるため、さまざまな経過措置や特例が設けられました。しかし、これらの措置も、徐々に縮小・終了に向かっています。
消費税をどうするのか、制度全体で考える必要がある
食料品の消費税率を0%にするのか、1%にするのか。
これは、物価高に苦しむ家計にとって重要な問題です。
食料品の消費税率を引き下げれば、消費者の負担は軽くなる一方、国や地方の税収は減少します。
また、消費税は消費者が支払う税金であると同時に、事業者が納税する税金でもあります。
インボイス制度による仕入税額控除の縮小は、免税事業者だけでなく、その取引先である課税事業者にも影響を及ぼします。
これらは別々の制度として議論されがちですが、最終的には「消費税をどのような税にしていくのか」という一つの問題につながっています。
食料品の消費税率を0%や1%に引き下げることが、本当に家計の負担軽減につながるのか。
その一方で、インボイス制度による仕入税額控除の縮小が、中小事業者やその取引先にどのような影響を及ぼすのか。
そして、消費税率の引下げによる税収減をどのように補うのか。
目の前の物価高対策だけでなく、消費者、免税事業者、課税事業者、そして国や地方自治体、それぞれにどのような影響が生じるのかを考える必要があります。
「消費税を下げる」という一つの政策だけを見るのではなく、こうした制度全体のバランスを含めて議論することが必要なのではないでしょうか。