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頼れる身寄りがいない高齢者を地域で支える新たな仕組み ~改正社会福祉法で始まる新たな支援~

「もし一人暮らしで入院することになったら、誰が手続きをしてくれるのだろう。」

 

「亡くなった後の手続きはどうなるのだろう。」

 

こうした不安を抱える高齢者は、今後ますます増えていくと考えられています。

 

高齢化や核家族化の進行、未婚率の上昇などを背景に、「頼れる身寄りがいない高齢者」や「家族に頼ることが難しい単身者」が増えています。こうした方々が安心して暮らせるよう、日常生活から亡くなった後の手続までを地域で支える仕組みづくりが求められていました。

 

こうした状況を踏まえ、2026年6月に成立した改正社会福祉法では、「頼れる身寄りがいない高齢者等への支援の充実」が盛り込まれました。

 

身寄りがないことで生じるさまざまな困りごと

身寄りがないといっても、日常生活を送ること自体に問題がない人も少なくありません。

 

しかし、年齢を重ねるにつれて、次のような場面で支援が必要になることがあります。

 

・福祉サービスや介護サービスの利用手続

・日常的な金銭管理

・入院・施設入所時の各種手続

・緊急時の連絡先の確保

・医療費や施設利用料の支払い

・亡くなった後の各種事務手続

 

これまでは家族や親族が担うことが多かった役割ですが、身寄りのない高齢者が増える中で、社会全体で支える仕組みづくりが求められていました。

 

自治体や社会福祉協議会による支援が広がる

今回の改正では、こうした支援を行う事業が新たに第二種社会福祉事業として位置付けられました。

 

第二種社会福祉事業とは、地域で生活する人を支える相談支援や日常生活支援などを行う事業です。第一種社会福祉事業(特別養護老人ホームなどの入所施設を中心とする事業)に比べ、地域の実情に応じて柔軟に事業を実施できることが特徴です。

 

この位置付けにより、自治体や社会福祉協議会のほか、第二種社会福祉事業として届出を行った法人なども、経済的な事情にかかわらず利用できるよう配慮された仕組みとなっています。

 

これにより、自治体や社会福祉協議会などは、

 

・日常生活の支援

・入院・入所手続の支援

・金銭管理の支援

・死後事務の支援

 

などを、利用者の一定割合以上に無料または低額で提供する事業を実施できるようになります。

 

ここでいう「死後事務」とは、葬儀や納骨の手配、賃貸住宅の明渡しや家財の処分、公共料金や携帯電話など各種契約の解約、行政や関係機関への各種届出など、亡くなった後に必要となるさまざまな手続をいいます。

 

国や自治体は、身寄りのない方の火葬など一定の対応は行いますが、遺品整理や契約解除などの死後事務まで代行するものではありません。そのため、生前から支援体制を整えておくことが重要になります。

 

民間サービスだけに頼らない仕組みへ

これまでも、自治体や社会福祉協議会が高齢者等終身サポート事業に取り組む事例はありましたが、民間の有料サービスが先行してきました。

 

その一方で、契約内容や費用をめぐるトラブルも発生しており、利用者保護の必要性が指摘されてきました。

 

私自身も、このような高齢者等終身サポートサービスに関するご相談を受けたことがあり、サービスの必要性を感じる一方で、契約内容や費用について不安を抱える方が少なくないことを実感しています。

 

国民生活センターには、民間の高齢者等終身サポートサービスについて、「契約内容がよく分からないまま契約してしまった」「思っていたより高額な契約だった」「預託金として100万円の支払いを求められた」といった相談が数多く寄せられています。

 

こうしたサービスは、一定の資力がなければ利用が難しいケースも少なくありませんでした。

 

今回の法改正は、民間サービスを否定するものではありません。

 

むしろ、公的・公益的な支援の選択肢を充実させることで、経済的な事情にかかわらず必要な支援を受けられる環境を整えようとするものです。

 

今回の制度では、社会福祉協議会による支援体制の整備を進めるとともに、第二種社会福祉事業として民間事業者も参画しやすい環境が整えられました。

 

また、2026年6月には成年後見制度を見直す改正民法も成立しました。これまで成年後見制度は、一度利用すると原則として本人が亡くなるまで続く仕組みでしたが、今後は必要に応じて利用を終了できるようになります。

 

今回の社会福祉法改正による支援は、成年後見制度の見直しとも方向性を共有するものといえます。成年後見制度の利用を終えた後も、身寄りがない高齢者等が地域で安心して生活できるよう支える役割が期待されています。

 

「家族がいるから大丈夫」とは限らない

今回の制度は、「身寄りのない人」のためだけのものではありません。

 

子どもが遠方に住んでいる、配偶者に先立たれた、親族との交流がほとんどないなど、「頼れる人が身近にいない」という状況は、誰にでも起こり得ます。

 

今は元気でも、将来に備えて、

 

・どのような支援制度が利用できるのか

・地域の社会福祉協議会にはどのような相談窓口があるのか

 

を知っておくことは、大きな安心につながるでしょう。

 

おわりに

高齢化が進む日本では、「家族が支えること」を前提とした仕組みだけでは対応が難しくなっています。

 

かつて介護の問題は家族が担うものと考えられていました。しかし、その負担を社会全体で支えるしくみとして介護保険制度が創設されました。

 

今回の改正もこれと同じように、身寄りのない人を包摂し、その抱える課題を社会全体で支えていくこと、さらには「身寄り」を前提としない社会のしくみへ転換していくことを目指すものといえるでしょう。

 

「もしものときに誰に相談できるのか。」

 

そんな不安を少しでも減らすためにも、お住まいの自治体や社会福祉協議会が行っている支援制度について、一度確認してみてはいかがでしょうか。

頼れる身寄りがいない高齢者を地域で支える新たな仕組みのポンチ絵
出所:厚生労働省HP〜社会保障審議会介護保険部会(第135回)参考資料1_P5〜