路線価は、相続税や贈与税の土地評価の基準であるとともに、現在の住宅市場の動向を映し出す一つの指標でもあります。今回公表された路線価からは、住宅価格の高騰が続く一方で、住宅ローンの超長期化など、住宅購入を取り巻く環境の変化も見えてきます。
7月1日、国税庁は2026年分の路線価を公表しました。
全国平均は前年比2.9%上昇し、5年連続のプラスとなりました。都市部の再開発やインバウンド(訪日客)の増加に伴うホテル・店舗需要に加え、堅調な住宅需要などを背景に、全国の平均変動率は、現在の集計方法となった2010年以降で最大の上昇率となりました。
路線価が示す「地価上昇」の流れ
路線価は毎年1月1日時点の地価を基に算定されるため、今回の公表結果には、ここ数年続いてきた住宅需要の強さが色濃く反映されています。
一方で、足元の住宅市場を取り巻く環境には、少しずつ変化も見え始めています。
日本銀行の利上げ方針を受け、住宅ローン金利は上昇傾向にあります。特に変動金利では1%前後の商品が増えるなど、超低金利時代からの変化が意識され始めています。
さらに、建築資材や人件費の高騰により、新築住宅の価格も高止まりが続いています。
本来であれば金利の上昇は住宅需要や地価を抑える要因となります。しかし現状では、都市部への人口集中や再開発、さらには「金利がさらに上がる前に購入したい」という心理も重なり、住宅需要を支えている状況です。
住宅ローンは「超長期」の時代へ
こうした住宅価格の高騰を象徴する動きとして、住宅ローンの返済期間の長期化があります。
これまで住宅ローンは最長35年が一般的でしたが、近年では36年以上、さらには40年や50年といった超長期ローンを取り扱う金融機関も増え、利用が広がっています。
背景には、住宅価格の上昇に加え、金利の上昇があります。
35年返済では毎月の返済額が大きくなり過ぎるため、返済期間を延ばして毎月の負担を抑えなければ住宅を購入しにくい状況になってきています。
毎月の返済額だけを見ると家計への負担は軽く感じられますが、その一方で注意すべき点もあります。
長期返済にはリスクもある
返済期間が長くなるほど、当初は元本がなかなか減りません。
そのため、転勤や家族構成の変化などで住宅を売却しようとした際、住宅ローンの残高が売却価格を上回る「オーバーローン」となるリスクがあります。
また、返済期間が長くなれば、その分だけ支払う利息の総額も大きくなります。
さらに、返済期間によっては定年後も返済が続くケースもあり、退職後の生活設計まで見据えた資金計画が重要になります。40年ローンを35歳で借りた場合には、75歳まで返済が続くことになります。
住宅ローンは毎月の返済額だけで判断するのではなく、「総返済額」や将来のライフプランも含めて考えることが重要です。
おわりに
今回公表された路線価は、日本の地価が依然として上昇基調にあることを示しました。一方で、その背景には住宅価格の高騰があり、それを支えてきた超低金利の環境も大きく変わり始めています。
こうした中、住宅ローンは超長期化が進み、毎月の返済額を抑えやすくなった反面、利息負担の増加やオーバーローン、定年後まで返済が続くといった新たなリスクにも目を向ける必要があります。
住宅購入を検討する際は、「いくら借りられるか」ではなく、「将来にわたって無理なく返済できるか」という視点で資金計画を立てることが、これまで以上に重要な時代になったと言えるでしょう。