6月17日に開催された財務省の国有財産分科会で、相続土地国庫帰属制度により国が引き取った土地の売却方法や価格算定方法について、新たな対応方針が示されました。
相続土地国庫帰属制度は、「相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度」として2023年4月に始まりました。
しかし制度開始から約3年が経過し、制度の新たな課題が見えてきています。
それは、国が引き取った土地がなかなか売れないという現実です。
今回は、この資料から見えてきた制度の現状と今後の課題について整理してみます。
国庫に帰属した土地は1,500件を超える
2026年3月末現在、相続土地国庫帰属制度により国へ帰属した土地は2,606件、そのうち財務局が管理している土地は1,586件となっています。
内訳を見ると、
・宅地 948件
・その他(土地)638件
となっています。
制度開始以来、国が引き受ける土地は着実に増加しています。
一方、売却実績はゼロ
しかし気になる記載があります。
「売却の可能性が見込まれる土地について一般競争入札を行っているものの、現時点で売却に至ったものはない」とされています。
つまり、「国は引き取っているが、その後の出口がない」という状況です。
制度創設当初から、市場性の低い土地が多く申請されることは予想されていましたが、それが数字として表れ始めたといえます。
売れない理由は「市場性の低さ」
その理由については、「国庫に帰属した土地は、市場性に乏しいものが多く、長期間保有し続けることが想定される」と説明されています。
もともと、
・利用価値が低い
・買い手が限定される
・管理コストがかかる
といった理由から手放された土地です。
そのため、国が引き取ったからといって、すぐに買い手が見つかるわけではありません。
売却を進める方針
そこで財務省は、処分方法を大きく見直します。
今回の見直しでは、一定の面積・価格以下の土地については、国の職員が簡易な評価手法で価格を算定できるようになります。
一方、基準を超える土地については、価格の透明性や説明責任を確保するため、不動産鑑定士による鑑定評価を行うこととされています。
そして、随意契約により売却する場合には、新たに現状有姿による売買などを導入する方針です。
一般競争入札だけでは売却が進まないため、より柔軟な処分方法へ切り替えることになります。
「現状有姿売買」では評価額の70%を基準に
今回、最も注目されるのが価格の考え方です。
現状有姿売買では、
・境界確定を行わない
・地中埋設物調査をしない
・土壌汚染調査をしない
など、多くのリスクを買主が負担します。
そのため財務省は、評価額から30%減額(残価率70%)を標準とする方針を示しました。
さらに、3か月間買い手が現れない場合は10%ずつ価格を引き下げ、最終的には評価額の7%まで引き下げることができる仕組みとされています。
財務省は、財政法上、国有財産は「適正な対価」で処分しなければならないことから、価格は相続税評価額を基礎として算定するとしています。
しかし、実際の土地取引では相続税評価額を大きく下回る価格で成約する例も少なくないことが資料で示されています。
つまり、市場の反応に応じた修正を適切に行い、土地が地域において早期に有効活用されることを目指すものです。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、相続人の負担軽減に大きな役割を果たす制度です。
一方で、引き取った土地の多くは市場性が低く、売却や活用が容易ではないことも明らかになってきました。
今回示された売却ルール見直しは、単なる評価方法の変更ではなく、「いかに地域で土地を活用し、管理コストを抑えるか」という制度運営上の課題への対応でもあります。
全国的な空き家問題への対応が進む中、京都市では市街化区域内を対象とした「非居住住宅利活用促進税(いわゆる空き家税)」の導入が予定されているほか、大阪府寝屋川市でも市内全域の空き家を対象とする条例案が提出されるなど、自治体による新たな取組も進んでいます。
人口減少や空き家・所有者不明土地の増加が続く中、相続土地国庫帰属制度は「引き取る制度」から、その後の利活用まで含めて考える段階に入ったといえそうです。
