· 

30年ぶりの金利1%時代へ ― 「金利のある世界」が本格化するなかで資産形成・運用・取り崩しをどう考えるか

日本銀行は6月16日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、1.0%程度とすることを決定しました。

 

これは1995年以来、およそ30年ぶりの水準です。

 

日本では長年にわたり超低金利政策が続いてきましたが、日銀が公表した会合の声明文やその後の記者会見からは、今後の経済・物価・金融情勢を踏まえながら、金融政策の正常化を進めていく姿勢がうかがえます。

 

もっとも、世界経済の先行きは依然として不透明です。中東情勢やエネルギー価格の動向、米国経済の行方など、不確実な要素は少なくありません。インフレが今後も続くのか、それとも再び落ち着くのかを正確に予測することはできません。

 

それでも一つ言えるのは、私たちが再び「金利を意識する時代」を迎えつつあるということです。

 

金利1%が意味するもの

長らく続いた超低金利政策のもとでは、預金金利はほぼゼロでした。

 

しかし、政策金利が上昇すれば、預金金利や企業向け融資金利、住宅ローン金利などにも影響が及びます。

 

預金者にとっては利息収入の増加が期待できる一方、借入れをしている人にとっては返済負担の増加につながる可能性があります。

 

とりわけ変動金利型の住宅ローンを利用している人にとっては、今後の金利動向への関心が高まるでしょう。

 

金利の上昇は家計や企業活動にさまざまな影響を与えますが、それは同時に、お金を「借りるコスト」や「預ける価値」を改めて考える時代が戻ってきたことを意味しています。

 

もっとも、名目金利は1%程度に達したものの、物価上昇率を考慮した実質金利は依然としてマイナス圏にあります。日銀も今回の利上げを「金融緩和の調整」と位置付けており、金融環境はなお緩和的な状態が続いています。

 

預金だけで資産は守れるのか

金利が上がると、「預金で十分なのではないか」と考える人もいるかもしれません。

 

確かに、これまでよりは預金の魅力が高まります。

 

しかし、重要なのは金利の水準そのものではなく、物価上昇率との関係です。

 

例えば預金金利が1%でも、物価が2%上昇していれば、実質的な購買力は低下します。

 

そのため、預金は安全資産として重要な役割を果たす一方で、資産のすべてを預金だけに依存することが適切とは限りません。「預金か投資か」ではなく、それぞれの役割を理解して組み合わせることが大切です。

 

株式や投資信託、債券など、それぞれの資産の特徴を理解しながら分散して保有するという考え方は、今後も重要であり続けるでしょう。

 

「運用」だけでなく「取り崩し」も考える

近年はNISAやiDeCoの普及もあり、「どう増やすか」に関心が集まっています。

 

しかし、本来の目的は資産を増やすことそのものではなく、将来の生活を支えることです。

 

その意味では、

・資産を築く(形成する)

・資産を増やす(運用する)

・資産を使う(取り崩す)

という3つの視点で考えることが重要です。

 

特に高齢化が進む日本では、老後にどのように資産を取り崩しながら生活を支えていくかという課題が、これまで以上に重要になります。

 

資産形成や運用の議論は多く見られますが、「取り崩し」の視点は意外と語られていません。

 

金利のある世界では、資産の運用方法だけでなく、資産をどのように活用するかも重要なテーマになるでしょう。

 

求められる金融リテラシー

低金利時代には、預金をしていても借入れをしていても、金利の影響を強く意識する場面は限られていました。

 

しかし、金利のある世界では状況が変わります。

・住宅ローンをどう選ぶのか

・預金をどこに預けるのか

・債券や株式をどのように活用するのか

 

こうした選択の結果が、家計に与える影響はこれまで以上に大きくなる可能性があります。

 

だからこそ、金融商品や制度の仕組みを理解し、自分自身で判断する力、すなわち金融リテラシーが重要になります。

 

金融リテラシーが重視される一方で、すべてを個人の自己責任に委ねるだけでは解決できない課題もあります。

 

所得や資産状況によって選択肢には差があり、金融知識だけで埋められない格差も存在します。そのため、自助努力を支える金融教育や、公的年金・社会保障制度の充実もまた重要な課題といえるでしょう。

 

まとめ

私たちは今、金利をほとんど意識しなくてもよかった時代から、金利を意識する時代へと移りつつあります。

 

 

もちろん、今後のインフレ率や金利水準を正確に予測することはできません。世界情勢や景気動向によって、状況は大きく変化する可能性があります。

 

しかし、予測できないからこそ、一つの資産や制度に依存せず、分散して備える姿勢が重要です。

 

「金利のある世界」は、お金が働く世界であると同時に、お金について学ぶことが求められる世界でもあります。

 

資産形成・運用・取り崩しを一体として考えながら、自分自身に合ったお金との付き合い方を見つけていくことが、これからますます重要になるのではないでしょうか。

 

「金利のある世界」が戻ってきた今、お金との付き合い方を改めて見直してみることが、将来への備えの第一歩になるのかもしれません。