長らく超低金利が続いてきた日本ですが、足元では金利上昇が鮮明になっています。
2026年5月15日には長期金利(10年国債利回り)が2.7%を付け、市場では財政悪化への警戒感も強まっています。
そうした中、改めて注目を集めているのが「個人向け国債」です。
これまで国債は「利回りが低い」「魅力が乏しい」と見られがちでした。しかし、2026年4月時点では、
・変動10年 約1.55%(税引前)
・固定5年 約1.79%(税引前)
・固定3年 約1.51%(税引前)
と、銀行預金を上回る水準となっています。
なぜ「変動10年」が人気なのか
特に人気を集めているのが「変動10年」です。
最大の特徴は、適用金利が半年ごとに見直される点にあります。
金利上昇局面では受取利率も上昇しやすいため、「今後さらに金利が上がるなら固定型より有利ではないか」と考える人が増えています。
一方で、「固定5年」や「固定3年」は、現在の比較的高い利率を満期まで確定できる点が特徴です。
・将来の利回りを固定したい
・安定収入を重視したい
・金利低下リスクを避けたい
という人には固定型も選択肢になります。
背景にある「国債の買い手問題」
もっとも、今回の国債人気は、単なる金利上昇だけでは説明できません。
政府(財務省)は現在、「国債の買い手の多様化」を重要課題として進めています。
これまで日本国債は、日銀による大規模な買い入れによって支えられてきました。
しかし、金融政策正常化に伴い、日銀は利上げや国債買い入れ減額を進めています。
つまり、これまで最大の買い手だった日銀の存在感が徐々に低下しているのです。
そのため政府は、
・個人投資家
・金融機関
・海外投資家
など、幅広い主体に国債を安定的に保有してもらう必要に迫られています。
市場が懸念する「財政拡張リスク」
背景には、日本財政への不安があります。
近年は、
・「責任ある積極財政」による歳出拡大
・防衛費の大幅増額
・減税や税制改正による歳入制約
などが重なり、財政赤字への懸念が強まっています。
市場では、「財政拡張が十分な成長につながらず、債務だけが増大するのではないか」との警戒感も広がっています。
実際、2026年5月13日に公表されたOECDの対日経済審査報告では、少子高齢化に対応する財源確保の必要性が指摘され、消費税率を段階的に引き上げ、最大18%とする試算も例示されました。
こうした議論自体が、日本財政の厳しさを象徴しているとも言えるでしょう。
海外投資家依存のリスクも
さらに、近年は海外投資家の日本国債保有比率も上昇しています。
ただし、海外投資家は金利や為替に非常に敏感です。
そのため、
・日本財政への信認低下
・急激な円安
・地政学リスク
・金融市場の混乱
などが起きた場合、一斉に資金が流出するリスクもあります。
つまり、「国債だから絶対安全」と単純には言い切れない側面もあるのです。
まとめ
金利上昇によって、個人向け国債は再び注目される存在となっています。
特に、
・元本の安全性を重視したい
・預金より高い利回りを求めたい
・退職金などを安定的に管理したい
という人にとっては、有力な選択肢の一つになり得ます。
一方で、その背景には、日本の財政事情や国債市場の構造変化があります。
「安全資産」という言葉だけで判断するのではなく、金利・財政・インフレ・為替なども含めて考える視点が、これまで以上に重要になっていると言えるでしょう。
なお、本記事は国債投資を推奨するものではなく、投資判断はあくまで自己責任で行う必要があります。