ふるさと納税制度に、大きな見直しの動きが出ています。
これまで、ふるさと納税は「自己負担2,000円で返礼品が受け取れる制度」として利用が広がってきました。
一方で、
・高所得者ほど有利になる
・高額返礼品競争が過熱している
・仲介サイトへの手数料負担が膨らんでいる
・本来の地域支援という趣旨から離れている
といった問題も指摘されるようになっています。
こうした中、2026年度税制改正では、高所得者向けの控除上限が新たに設けられることとなり、あわせて総務省は仲介サイト手数料の引き下げ要請にも乗り出しています。
高所得者向けに「193万円上限」を導入
ふるさと納税による税控除は、次の三つの要素で構成されています。
・所得税の寄附金控除(2,000円控除後の所得税率)
・住民税の基本控除(2,000円控除後の10%)
・住民税の特例控除(所得割額の20%を限度)
このうち、実質的に「自己負担2,000円」で寄附ができる仕組みを支えているのが、住民税の特例控除です。
従来、この特例控除には「住民税所得割額の20%」という制限はあるものの、金額ベースでの上限は設けられていませんでした。
そのため、所得が高い人ほど寄附可能額も大きくなる仕組みでした。
しかし、2027年分の寄附からは、住民税の特例控除額について「193万円」の上限が設けられます。
その結果、給与収入1億円弱の人は約438万円程度の寄附で控除上限となるケースが想定されています。
なお、この改正は2028年度住民税から適用されますが、対象となるのは「2027年中の寄附」です。
なぜ見直されるのか
背景には、「高所得者優遇ではないか」という議論があります。
ふるさと納税は、所得が高いほど控除額も大きくなるため、高額な返礼品を受け取りやすい構造となっていました。
その結果、
・制度本来の趣旨から外れているのではないか
・応能負担の観点から公平性に欠けるのではないか
・「節税メリット競争」になっているのではないか
という指摘が強まっていました。
今回の改正は、こうした「過度な高額利用」に一定の歯止めをかける意味合いがあると考えられます。
仲介サイト手数料1379億円問題
もう一つの大きな論点が、仲介サイトへの手数料です。
総務省の調査では、2024年度のふるさと納税において、寄附の94.5%が仲介サイト経由となっており、自治体が支払った手数料は1,379億円に達していました。
さらに、取り扱いの大半が一部大手サイトへ集中しているとも報じられています。
本来、ふるさと納税は「地域を応援する制度」として始まりました。
しかし現実には、
・仲介サイト手数料
・広告宣伝費
・返礼品競争コスト
などに多額の資金が流れている構図も見られます。
つまり、本来は地域振興に活用されるべき資金の一部が、地域ではなく都市部の大手サイトへ流出している側面もあるということです。
総務省は「自治体に残る割合」の引き上げへ
こうした状況を踏まえ、総務省は、今後3年間で「自治体が実際に活用できる割合」を60%以上へ引き上げる方向性を示しています。
現在は、返礼品調達費や事務費を含めた募集経費の上限は寄附額の50%とされていますが、今後はさらに適正化が進められる可能性があります。
その一環として、
・仲介サイト手数料の引き下げ
・募集経費の透明化・適正化
なども議論されています。
これは単なる「コスト削減」ではなく、「寄附金をできるだけ地域に残す」という方向への制度修正とも言えるでしょう。
総務省は「寄附金は公金的性格を有する」との考え方を示しており、仲介サイトのあり方そのものの見直しも視野に、強いプレッシャーをかけています。
ふるさと納税がもたらした想定外の歪み
ふるさと納税は当初、「生まれ故郷や応援したい地域を支援する制度」として始まりました。
しかし現在では、返礼品競争や仲介サイト依存が進んだ結果、「地域支援制度」というよりも、「返礼品を選ぶ制度」として認識される場面も増えています。
また、住民税流出による都市部財政への影響や、高所得者ほど有利になりやすい構造など、制度開始時には想定されていなかった課題も広がっています。
その結果、一部では「官制通販」との批判も見られるようになりました。
今回の改正は、こうした歪みを是正し、「お得競争」から「地域支援」へ制度を戻そうとする流れの一部として見ることもできるでしょう。
まとめ
2026年度税制改正では、ふるさと納税制度に対し大きな見直しが行われました。
特に注目されるのは、
・高所得者向けの「193万円上限」
・仲介サイト手数料の適正化
・自治体に残る財源割合の引き上げ
です。
ふるさと納税は、単なる「返礼品制度」ではなく、本来は地域支援の仕組みでもあります。
今後は、「どれだけ得か」だけではなく、「寄附金がどのように地域で活用されるのか」という視点も、これまで以上に重要になっていくのかもしれません。
