2026年度税制改正により、青色申告特別控除は、帳簿・申告の電子化をさらに促進する方向へ大きく見直されます。
適用は2027年分の所得税からですが、内容を見ると、個人事業主やフリーランスに対して、帳簿や申告の電子化を強く促す方向性が鮮明になっています。
今回の改正では、電子申告(e-Tax)と「優良な電子帳簿保存」に対応した事業者について、青色申告特別控除が最大75万円へ引き上げられる一方、紙による申告は控除額が大幅に縮小されることになります。
現行制度はどうなっている?
現在の青色申告特別控除は、主に次の3区分となっています。
まず、複式簿記により記帳し、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存を行っている場合には、65万円控除が適用されます。
一方、複式簿記で記帳していても、紙による申告など電子化要件を満たさない場合は55万円控除となります。
また、簡易簿記の場合は10万円控除です。
つまり、現行制度でも、最大となる65万円控除を受けるためには、すでにe-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存への対応が必要となっています。
2027年分からは「75万円控除」が新設
今回の改正では、控除体系がさらに電子化重視へと進みます。
2027年分以後は、複式簿記による記帳に加え、e-Taxによる申告と「優良な電子帳簿保存」の両方を満たすことで、最大75万円控除が適用されます。
一方、複式簿記であっても、e-Taxによる申告のみの場合は65万円控除となります。
「優良な電子帳簿」とは?
今回のポイントは、単に会計ソフトを導入すればよいわけではない点です。
75万円控除を受けるためには、
・複式簿記
・e-Taxによる申告
・「優良な電子帳簿保存」の要件を満たすこと
が必要になります。
「優良な電子帳簿保存」の具体的な要件には、
・訂正・削除履歴が残る
・帳簿同士が関連付けられている
・日付や金額などで検索できる
など、帳簿の信頼性や改ざん防止に関する一定の要件が求められます。
そのため、「会計ソフトを導入しただけ」では足りず、優良な電子帳簿保存の要件を満たしたうえで、電子データによる備付け・保存を行い、所定の届出書を提出する必要がある点には注意が必要です。
要件を満たすには、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の公式サイトで「電子帳簿ソフト法的要件認証」を受けた会計ソフトを利用するのが確実です。
なお、優良な電子帳簿保存には、青色申告特別控除の拡大だけでなく、過少申告加算税の軽減措置がある点もメリットです。税務調査で誤りが見つかった場合でも、ペナルティとなる過少申告加算税が5%軽減されます。
紙申告・簡易簿記は厳しくなる
今回の改正は、「優良な電子化」を進める一方で、従来型の申告には厳しい内容となっています。
特に影響が大きいのは、紙申告による複式簿記です。
現行制度では55万円控除の対象ですが、改正後は、紙で提出する場合は、複式簿記であっても原則として10万円控除まで減額されます。
また、簡易簿記による10万円控除についても、前々年の収入金額が1,000万円を超える場合には適用対象外となります。
そのため、一定規模以上の事業者については、「簡易簿記のままでは青色申告特別控除を受けられない」ケースも出てきます。
なぜここまで電子化を進めるのか
背景には、
・経理・税務のデジタル化推進
・インボイス制度との連携
・事務負担軽減
・記帳の適正化
・税務行政の効率化
といった流れがあります。
近年は電子帳簿保存法も段階的に強化されており、「紙中心の経理」から「データ中心の経理」への転換が加速しています。
青色申告特別控除も、その流れの中で再編されつつあるといえるでしょう。
今から準備しておきたいこと
適用開始は2027年分からですが、実際には2026年中から準備しておいた方が安心です。
例えば、
・e-Tax利用環境の整備
・マイナンバーカードの取得
・複式簿記への移行
・会計ソフトの導入・見直し
・優良な電子帳簿保存への対応
などは、直前になって慌てるよりも、時間に余裕のある今から進めておく方がスムーズです。
特に、これまで紙申告をしていた方や、簡易簿記中心だった方は、早めに確認しておくとよいでしょう。
まとめ
2027年分から、青色申告特別控除は大きく変わります。
今回の改正は、「電子化に対応した事業者を優遇する」という方向性を、より明確にしたものといえます。
一方で、従来どおりの紙申告や簡易簿記では、控除額が大きく縮小される可能性もあります。
2027年分からの制度変更に向けて、今のうちから経理体制や電子帳簿保存への対応を進めておくことが重要になりそうです。