日本銀行は、2026年度の物価見通し(コアCPI)を2.8%に上方修正しました。2%という長年の目標を上回る水準です。
一方で、今回の金融政策決定会合では、追加利上げは見送られました。不安定な中東情勢などが景気に与える影響を慎重に見極める必要があるためです。もっとも、本日の円相場は1ドル160円台まで下落し、長期金利の指標となる10年物国債利回りも2.5%を超えました。市場では、金融政策の先行きに対する警戒感も高まっています。日本銀行には、物価の安定だけでなく、経済や雇用への配慮も求められます。その意味で、政策判断は容易ではありません。
ただ、政策対応がやや後手に回っているのではないか、との見方もあります。日本では、2%を超える物価上昇がすでに長期間続いており、物価上昇率を差し引いた実質金利は、大幅なマイナス圏にとどまっています。主要国に比べて、日本の金融環境の緩和度は際立っています。その結果、円安が進み、輸入インフレを通じて家計の負担を押し上げる構図が続いています。
利上げといっても、なお歴史的に低い水準です。円安の是正や輸入インフレの緩和という観点から見れば、中長期的には一定の意義があるとの考え方もあります。
しかし、現実には、政府は補助金など短期的な対策に追われがちです。もちろん、それ自体は必要な面もありますが、私たち個人は、それだけに頼るわけにはいきません。なぜなら、そうした支援は恒久的なものではないからです。そのため、自ら家計を守り、資産を守る意識がますます重要になっています。
なぜ物価は上がり続けるのか
背景には、エネルギー価格や食料価格の上昇だけではなく、日本企業の経営姿勢の変化があります。
かつては「コストカットで耐える」ことが重視されました。しかし今は、
・人手不足の深刻化
・賃上げ圧力の高まり
・値上げへの社会的理解
・原材料価格の上昇
を背景に、「価格転嫁して賃金に回す」流れが定着しつつあります。
これは、日本経済が長年苦しんできたデフレから脱却するうえで、歓迎すべき変化です。
ただし、この流れが真に健全なものとなるには、物価上昇を上回る賃上げが不可欠です。
本当に必要なのは「賃金が上がる社会」
『日本経済の死角』で河野龍太郎氏は、日本経済の問題は生産性にあるのではなく、「利益をどう分配するか」が重要なのだと指摘しています。
企業が利益を、株主だけでなく、従業員や将来への投資に適切に配分できるかどうか。内部留保を積み上げるだけでなく、人的投資や設備投資に積極的に取り組む企業を後押しする政策が求められます。
もっとも、中小企業が賃上げを実現できる環境整備は欠かせません。
インフレは政策の結果でもある
FRB次期議長候補のケビン・ウォーシュ氏は、「インフレは選択の結果である」と述べています。
インフレは、外部要因ではなく、金融政策の影響が極めて大きいという指摘です。
日本でも、超低金利政策が円安を通じて輸入インフレを招いた面は否定できません。
もちろん、日本銀行には景気や雇用への配慮という重要な使命があり、単純な比較はできません。
それでも、政策の遅れが家計に重い負担をもたらしていると感じる人は少なくないでしょう。
預金だけでは資産は守れない
物価が年2.8%上昇するということは、現金の価値が毎年2.8%ずつ目減りすることを意味します。
たとえば、100万円を普通預金に預けていても、金利が0.4%では、実質的には価値が減少してしまいます。
つまり、預金だけでは資産を守りにくい時代に入ったということです。「預金は安全」という考え方も、インフレ局面では見直しが必要でしょう。
そのため、生活防衛資金を確保するとともに、長期・積立・分散による資産形成や固定費の見直しなど、自ら家計と資産を守る姿勢が重要になっています。
まとめ
インフレ時代に必要なのは、「貯める(預金)」ことだけではなく、「守りながら増やす」ことです。
政策への評価はさまざまでしょう。しかし、私たちの暮らしは、政策を待つだけでは守れません。
変化の時代だからこそ、自分の資産は自分で守る。
それが、これからの時代を生き抜くための、現実的な選択ではないでしょうか。