高齢化の進展により、日本では年間約160万人が亡くなる時代となっています。いわゆる「多死社会」ともいえる状況です。
国税庁の発表によれば、そのうち約1割が相続税の課税対象とされ、さらに東京都に限れば、その割合は約2割とされています。
相続が「一部の富裕層の問題」という認識は、徐々に現実とズレ始めています。背景にあるのは、都市部の不動産価格や株価の上昇です。
「自分の家は関係ない」と考えていた方が、いざ相続の場面で申告の必要に直面するケースも、今後は一層増えていく可能性があります。
相続手続きの現実
実務の現場では、相続手続きの煩雑さが大きな負担となっています。
・金融機関ごとに異なる手続き
・戸籍謄本など同じ書類の重複提出
・遠方在住の相続人とのやり取り
・把握できていない口座の存在
こうした問題は、時間的・精神的な負担だけでなく、結果として相続手続きの遅延や、場合によってはトラブルの原因にもなり得ます。
特に近年は、被相続人自身も保有資産の全体像を整理しきれていないケースが少なくありません。
そのため、「どこに何があるのか分からない」という状態から手続きが始まることも珍しくないのが実情です。
金融機関による新たな動き
こうした状況を受けて、日本経済新聞の報道によると、銀行や証券会社など大手金融機関7社が、相続手続きを一括で対応できる新会社を設立する動きがあるとされています。
この仕組みでは、
・一社への連絡で、参加金融機関の口座を横断的に確認できる
・戸籍謄本などの資料はウェブ上で提出可能
・遠方からでも手続きが進められる
といった利便性の向上が見込まれています。
また、金融機関側にとっても、人件費や郵送費などのコストを約3割削減できるとされており、単なるサービス向上にとどまらず、業務効率化の側面も大きいといえそうです。
便利になる一方で、問われる準備
このような動きは、相続手続きの負担軽減という点で歓迎すべきものです。
近年は、相続手続きの負担を軽減するための仕組みが、少しずつ整えられてきています。
たとえば、戸籍関係の手続きの簡素化や、法定相続情報証明制度のように、必要書類の提出を効率化する取り組みも進められてきました。
今回の金融機関による一括照会の仕組みも、そうした流れの延長線上にあるものといえそうです。
もっとも、こうした仕組みが整ったとしても、
・どこにどのような資産があるのか
・家族間で情報が共有されているか
といった点については、やはり家族の中での整理が前提となります。
とりわけ近年は、ネット銀行や証券口座など、オンライン上で完結する資産も増えています。
これらは利便性が高い一方で、本人以外が存在を把握しにくく、相続時に見落とされやすいという側面があります。
そのため、口座の有無や利用している金融機関については、一定の形で整理しておくことが重要です。
また、ログイン情報や暗証番号の取り扱いについても、セキュリティに配慮しつつ、いざというときに確認できる方法を検討しておく必要があるでしょう。
利便性が高まるからこそ、それを活かせるよう、無理のない範囲で準備をしておくことが大切になってくるのかもしれません。