2026年は、私的年金制度にとって比較的大きな制度改正が予定されています。
その中でも注目されるのが、企業型確定拠出年金(DC)における「マッチング拠出」の見直しです。
2026年4月から、これまでの制度の制約が大きく緩和され、従業員が拠出できる掛金の自由度が高まります。
老後資金づくりに関心のある人にとっては、制度の使い方が変わる可能性もあるため、基本的なポイントを整理しておきましょう。
確定拠出年金とは何か
確定拠出年金とは、拠出された掛金を加入者自身が運用し、その運用成果によって将来受け取る年金額が決まる制度です。
代表的なものとして次の2つがあります。
・企業が掛金を拠出する企業型確定拠出年金(DC)
・個人が掛金を拠出する個人型確定拠出年金(iDeCo)
どちらも
・掛金が非課税
・運用益が非課税
・受取時も税制優遇がある
といった税制メリットがあります。
マッチング拠出とは
DCには、企業が拠出する掛金に加えて、従業員自身が掛金を上乗せできる「マッチング拠出」という仕組みがあります。
この従業員拠出分もiDeCoと同様に所得控除の対象となるため、税制面でのメリットがあります。
ただし、これまでの制度には、加入者掛金は「会社の掛金以下」でなければならないという制約がありました。
例えば、
・会社の掛金:月1万円
・従業員の拠出:最大1万円
つまり、会社の掛金が少ない場合は、十分に拠出できないという問題がありました。
2026年4月改正では
2026年4月1日から、この制限が撤廃されます。
これにより、従業員掛金が会社掛金を上回る設定も可能になります。
ただし、完全に自由になるわけではなく、会社掛金+従業員掛金の合計が拠出限度額以内という条件は引き続きあります。
2026年4月時点の上限は月5.5万円です。
例えば、
・会社掛金:1万円
・従業員掛金:4万5千円
という拠出も可能になります。
DBなどの企業年金がある場合
企業によっては、DCとは別に確定給付企業年金(DB)などの企業年金制度を併用している場合があります。
その場合は、月5.5万円から、DBなどの他制度掛金相当額を差し引いた額が上限となります。
この場合、先の例でいえば、従業員掛金が4万5千円まで拠出できるわけではありません。
さらに2026年12月には上限拡大
制度改正はこれで終わりではありません。
2026年12月からは、拠出限度額が月6.2万円へ引き上げられる予定です。
この改正は、実際の掛金引き落としでは2027年1月から適用されます。
なお、iDeCoの拠出限度額の拡充については、以前のブログでも解説していますので、あわせてご参照ください。
iDeCoとの関係も変わる
これまでDCの加入者は、マッチング拠出かiDeCoのどちらか一方しか利用できません。
そのため、会社掛金が少ない場合はiDeCoを選んだ方が有利とされるケースも多くありました。
しかし今回の改正で、マッチング拠出の自由度が大きく上がるため、iDeCoよりマッチング拠出の方が有利となるケースも出てきます。
マッチング拠出のメリット
マッチング拠出には次のようなメリットがあります。
① 口座管理手数料の負担なし
DCでは、口座管理手数料は会社が負担しているケースが多く、iDeCoのように年間2,000円程度の手数料を個人が負担する必要がない場合があります。
② 税制メリットはiDeCoと同じ
・掛金は所得控除
・運用益は非課税
という税制メリットは、iDeCoと同様です。
デメリットや注意点
一方で、次の点には注意が必要です。
① 運用商品の選択肢が少ない場合がある
DCは、会社が用意した商品の中から選ぶ必要があります。
そのため、iDeCoより選択肢が少ないケースもあります。
② 手数料が高い場合もある
DCでは、
・運用管理手数料が比較的高い
・商品の信託報酬が高い
といったケースもあり、内容は制度によって大きく異なります。
実際の導入は会社ごとに異なる
今回の改正は、法律が施行されても、すぐにすべての会社で利用できるわけではありません。
DCの規約変更や、社内制度の整備、金融機関とのシステム連携などが必要になるため、会社ごとに導入時期が異なる可能性があります。
制度改正が示すもの
今回の改正は、制度としては「自助による老後資金形成」を後押しする方向の見直しと言えます。
ただし、実際の有利・不利は制度内容によって変わるため、DCのメリットとデメリットをiDeCoと比較検討する必要があります。まずは、ご自分の会社の制度内容を確認することが重要です。
もっとも、資産形成を後押しする制度が広がる一方で、足元では物価上昇が家計を圧迫しています。
地政学的な緊張の高まりなどを背景とした物価上昇のなか、日々の生活費の負担に直面し、将来不安を抱える人も少なくありません。
実際、投資に資金を回した結果、生活が苦しくなる「NISA貧乏」という現象が国会でも取り上げられました。
確定拠出年金やNISAなどの制度は、老後資金形成を支える重要な仕組みではありますが、それだけで将来の安心が確保されるわけではありません。
安心して将来設計ができる公的な社会保障制度のあり方についても、現実を直視し、先送りしない姿勢が求められているのではないでしょうか。