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税務調査の着眼点 ― 経費はどこまで認められるのか

3月に入り、確定申告もいよいよ後半戦です。

また、3月決算の法人も多く、実務の現場では期末処理が慌ただしい時期でもあります。

 

こうしたタイミングで意識しておきたいのが、税務調査の着眼点です。

 

税務調査では、大きく分けて

・売上の計上が適切か

・仕入の計上が適切か

・経費の計上が適切か

といった点が確認されます。

 

今回は、このうち「経費」に絞り、税務調査で指摘されやすいポイントと、その留意点を整理してみます。

 

架空計上よりも多い指摘とは

架空経費や水増し計上、仮装経理による繰上げ計上は、言うまでもなく論外です。

 

しかし、実際の調査で比較的多いのは、そうした悪質な事例というよりも、

「期末までに債務が確定していないのではないか」

という指摘です。

 

つまり、その経費は本当に当期のものといえるのか、という論点です。

 

税務上の「債務が確定している」とは

法人税法上、各事業年度の所得金額の計算において損金に算入できるのは、

・売上原価

・販売費

・一般管理費

・その他の費用

・損失の額

などとされています。

 

このうち「販売費、一般管理費その他の費用」については、その事業年度終了の日までに債務が確定しているものに限られます(償却費を除く)。

 

では、「債務が確定している」とはどのような状態をいうのでしょうか。

 

税務上は、その事業年度終了の日までに次の3要件をすべて満たすことが必要とされています。

 

1. その費用に係る債務が成立していること

2. その債務に基づき、相手方からの給付があったこと

3. その金額を合理的に算定することができること

 

この3要件が揃って、はじめて当期の損金として計上することができます。

 

なお、この「債務確定」の考え方は、法人だけでなく個人事業者にも当てはまります。

 

修繕費を例に考える

例えば、建物の修繕を発注したケースを考えてみましょう。

・修繕の発注をしている

・業者によって修繕が完了している

・金額が客観的に算定可能である

 

このような状況であれば、上記3要件を満たし、未払金等として計上できるとされています。

 

一方で、

・まだ工事が完了していない

・金額が未確定で概算にとどまっている

といった場合には、「債務が確定している」とまでは言えないケースと考えられます。

 

予算消化目的の「先行請求」は要注意

決算期が近づくと、

「予算を消化するために、請求書を先に発行してもらい未払計上する」

といったケースも散見されます。

 

しかし、請求書が発行されているという形式だけでは足りません。

その債務に基づいて、相手方からの給付が期末までにないのであれば、損金算入はできません。

 

問題となるのは「書類の有無」ではなく、実態として債務が確定しているかどうかです。

 

形式を整えることのリスク

社内牽制が機能していれば、「まだ役務提供が完了していないのではないか」といったチェックが入るでしょう。

 

しかし、それを形式的にクリアするために、

・実態と異なる日付の納品書を発行してもらう

・役務完了報告書を事実に反して作成してもらう

といった対応をしてしまうと、単なる計上時期の問題では済みません。

 

仮装・隠ぺいと認定されれば、税務上は重加算税の対象となる可能性があります。

 

判断の誤りと、意図的な事実の改変とでは、税務上の評価は大きく異なります。

「決算対策」のつもりが、将来のリスクを拡大させることにならないよう、慎重な対応が求められます。

 

発生主義という原則

税務は原則として発生主義です。

問題となるのは、支払の有無ではなく、債務の確定の有無です。

 

逆にいえば、支払っていなくても債務が確定していれば当期計上は可能ですし、
支払っていても翌期に対応する費用であれば繰延べが必要になる場合があります。

 

なお、意図的に費用の計上時期を先送りする行為は、税務の問題というよりも、粉飾経理と評価され得る会計上の問題です。

 

期末処理で意識しておきたいこと

税務調査で指摘されやすいのは、

・期末にまとめて計上した経費

・請求書日付だけを根拠に計上しているもの

・実際の納品や役務提供時期が曖昧なもの

などです。

 

決算時には、

・契約上、債務が成立しているか

・実際に納品や役務提供が完了しているか

・金額が合理的に算定できる状態か

を一つひとつ確認しておくことが重要です。

 

最後に

税務調査は、特別な会社だけが対象になるものではありません。

日々の経理処理の積み重ねが、後から問われます。

 

とくに、

「期末までに、実際に納品や役務提供が完了しているか」

この視点を持つだけでも、決算処理の精度は大きく変わります。

 

決算期は、実態と帳簿の対応関係を丁寧に見直す時期でもあります。

期末における一つひとつの判断が、将来の税務調査で問われる可能性があります。

 

だからこそ、形式ではなく実態を基準とした経理処理を積み重ねることが、最も確かな備えになるのではないでしょうか。