決算対策の一つとして活用される「決算賞与(未払賞与)」ですが、損金算入が認められるためには、形式的な要件を厳格に満たす必要があります。
制度の基本とあわせて、見落とされがちな実務上の注意点を整理します。
決算賞与の損金算入要件
決算賞与(未払賞与)は、次のすべての要件を満たす必要があります。
① 個別かつ同時の通知
各人別に支給額を定め、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
② 1か月以内の支払い
通知した金額を、通知対象となったすべての使用人に対して、事業年度終了日の翌日から1か月以内に支払っていること
③ 損金経理
通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること
そして重要なのは、損金算入時期は「通知をした日の属する事業年度」とされるため、その時点で未払計上を行う必要があるという点です。
「通知」とはどの時点をいうのか
ここで問題となるのが、「通知をした」とはいつの時点を指すのか、という点です。
実務上は、使用人が「了知可能な状態」に置かれた時点と解されています。
電子メールによる通知はどこまで必要か
電子メールで通知を行うケースも一般的ですが、
・メールの開封までは不要
・受信トレイに到達していることが必要
と考えられます。
つまり、会社が送信しただけでは足りず、メールの開封までは求められていないものの、少なくとも受信トレイに届いていること(到達)が前提となります。
土日・祝日の通知に潜むリスク
ここで見落としがちなのが、通知日が休日にかかるケースです。
土曜日・日曜日・祝日は通常、会社の休日に該当します。
この場合、
・使用人がメールを確認できる状態にない
・「了知可能な状態」といえない可能性がある
というリスクが生じます。
したがって、決算日にメールを送信しても、それが休日であれば「通知した」と評価されない可能性がある点には注意が必要です。
実務上の対応
この点を踏まえると、実務上は次のように考えるべきでしょう。
決算日の前日までの勤務時間内に通知を完了させる必要があります。
特に、
・決算日が土日・祝日の場合
・その日を基準に処理しようとする場合
には、
最も近い営業日の勤務時間内までに通知することが望ましい対応といえます。
また、補完的な対応として、書面により通知を行い、各使用人から受領印を取得するなど、後日確認可能な形を残しておくことも有効です。
よくある否認リスク
さらに、次のようなケースは要件を満たさず、全額損金不算入となる可能性があります。
・支給日に在職する者のみ支給する旨の条件付き通知は、支給額の通知に該当しない
この点については、法人税法基本通達9-2-43において、「支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知」は、通知要件に適合しない旨が示されています。
この取扱いからすれば、決算賞与の未払計上は、支給日までに退職した者に対しても支給する前提であることが求められていると整理できます。
・通知内容と実際の支給対象者・金額が異なる場合、要件不充足として否認されるリスクがある
・メールが決算日までに到達していない場合、そもそも通知が成立しない
まとめ
決算賞与は有効な節税手段である一方で、「通知」という一見形式的な要件が、実務上は非常に重い意味を持つ点には注意が必要です。
特に電子メールの利用が一般化している現在においては、
・到達しているか
・了知可能な状態か
・通知のタイミングは適切か
といった点を丁寧に確認しておくことが重要でしょう。