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電子帳簿保存法における電子データ保存の考え方

近年、生成AIをめぐる動きは、バックオフィス業務を支えるソフトウェアのあり方そのものにも影響を与えつつあります。米国の新興企業による新たな人工知能(AI)ツールの公開をきっかけに、業務ソフトを手がける企業の株価が急落した、というニュースもありました。背景には、これまで特定の業務に特化してきた単機能のSaaSが、より汎用的な生成AIに置き換えられるのではないかという市場の警戒感があります。

 

こうした技術環境の変化に加え、SaaSの普及により、企業のバックオフィス業務は細分化が進んでいます。会計システム、経費精算システム、請求書管理システムなどを用途ごとに使い分けることも一般的となり、結果として電子取引データの保存場所が複数に分かれるケースは、いまや珍しいものではありません。

 

経費精算や請求書管理といった分野でも、「どのシステムを使うか」「今後も使い続けられるか」といった視点が、これまで以上に重要になってきました。同時に、システムの選択や継続性だけでなく、「電子データをどのように保存・管理しておくべきか」という視点も、あらためて意識しておく必要があります。

 

こうした環境変化の中で確認しておきたいのが、電子帳簿保存法における電子データ保存の基本的な考え方です。電子帳簿保存法では、請求書や領収書などを電子データで授受した場合、その電子データを一定の要件のもとで保存することが求められています。近年では、

 

・クラウド型の経費精算システム

・取引先指定のEDIやプラットフォーム

・電子メールで受領するPDF請求書

 

など、電子取引の形態は多様化しており、実務の現場では「保存先を一つにまとめなければならないのか」という疑問を持たれることも少なくありません。

 

保存場所は複数でも問題ない

結論からいえば、電子データの格納先や保存場所が複数に分かれていても差し支えありません。

例えば、

 

・経費精算はクラウド経費精算システム

・仕入請求書は取引先指定のプラットフォーム

・その他の請求書は電子メールで受領

 

といったように、取引データの授受方法に応じて保存システムが異なることは、実務上も合理的とされています。すべての電子取引データを一つのシステムに集約しなければならない、という考え方ではありません。

 

重要なのは「検索性」と「明瞭性」

もっとも、保存場所が複数に分かれていてよいとはいえ、無制限に分散してよいわけではありません。

 

電子帳簿保存法で特に重視されているのは、

 

・整然とした形式で管理されていること

・明瞭な状態で表示できること

・必要なときに速やかに検索・出力できること

 

という点です。

 

そのため、複数の保存場所がある場合には、

 

・A取引先のデータはaシステム

・B取引先のデータはbシステム

 

といったように、「どの取引先のデータが、どこに保存されているのか」が一目で分かる管理方法を採っておく必要があります。

 

認められない保存方法とは

一方で、次のような保存方法は認められないとされています。

 

・同一取引先・同一システムで毎月授受しているにもかかわらず

・合理的な理由もなく

・保存先を規則性なくバラバラにしている

 

その結果、

・検索に時間がかかる

・どこに保存されているのか担当者しか分からない

・税務調査等で速やかに出力できない

 

といった状態になっている場合には、電子帳簿保存法上の保存要件を満たさないと判断される可能性があります。

 

実務対応のポイント

実務上は、次の点を意識しておくと安心です。

 

・保存場所が複数ある場合は、事務処理規程や一覧表などで整理する

・取引先別・書類種類別に保存ルールを明確にする

・担当者が変わっても分かる管理方法にしておく

 

「分散保存は可能だが、無秩序は不可」という点が、電子帳簿保存法における基本的なスタンスといえるでしょう。

 

おわりに

電子帳簿保存法への対応というと、システム選定や操作方法に目が向きがちですが、本質は「必要な電子データを、必要なときに説明できる状態で管理できているか」にあります。

 

自社の電子取引の実態に即した保存方法になっているか、あらためて整理・確認しておくことが重要です。