2026年1月1日、中小受託取引適正化法(通称:取適法)が施行されました。いわゆる改正下請法として、中小企業と委託事業者との取引の適正化を図ることが目的とされています。
今回の改正では、委託事業者による不当な取引慣行を是正するため、11の禁止行為が整理・明確化されました。
委託事業者の11の禁止行為
取適法では、委託事業者による次のような行為が禁止されています。
1. 物品等の受領拒否
2. 代金の支払遅延
3. 代金の減額
4. 返品の強制
5. 買いたたき(著しく低い代金の設定)
6. 購入・利用強制
7. 報復措置
8. 有償支給原材料等の対価の早期決済
9.不当な経済上の利益の提供要請
10.不当な給付内容の変更・やり直し
11. 協議に応じない一方的な代金決定
いずれも、従来から問題とされてきた取引慣行を明確に禁止したものです。
振込手数料の控除廃止など、現場の反応は上々
今回の改正で特に歓迎されているのが、振込手数料の扱いの見直しです。
振込手数料については、「債務者(委託事業者)負担の原則」が明確に示され、受託事業者の代金から一方的に控除することは認められない整理となりました(3の「代金の減額」につながる行為として問題視されるものです)。
これまで中小企業の現場では、
・振込手数料と称して、実際の手数料以上の金額が差し引かれる
・しかも数字を丸めた、根拠の分からない金額が控除される
といった慣行も見られました。
今回の見直しにより、「手数料が引かれなくなって助かる」といった声も多く、中小企業側からの反応は概ね好意的といえそうです。
また、支払サイトの短縮も進むことが期待されており、資金繰りの改善につながる点も評価されています。
※振込手数料の取扱いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「振込手数料の負担と改正下請法 ― 2026年1月からどう変わる?」
価格交渉の実効性が高まるかが今後の焦点
今回の改正では、コスト上昇分が適切に価格へ反映される取引環境の整備が重視されています。
実際の現場では、「価格協議に応じてもらえない」という声も少なくありません。
構造的な価格転嫁を実現するためには、単に価格改定のルールを設けるだけでなく、価格協議が実質的に行われる取引慣行の定着、資金繰りを圧迫しない支払条件の整備、コスト情報の共有や相談制度の実効性確保など、サプライチェーン全体で価格転嫁が円滑に行える環境づくりが不可欠です。
今回の改正が、形式的なルールにとどまらず、実効性のある価格交渉につながるかが今後のポイントになるでしょう。
中小企業は日本経済の基盤
日本の企業の約99.7%は中小企業であり、国内雇用の約7割を支えています。
まさに日本経済の基盤といえる存在です。
その一方で、
・赤字企業が約7割に達する
・小規模事業者が多い
といった構造的な課題も抱えています。
こうした状況の中で、取引条件の適正化は、単なるルール整備にとどまらず、地域経済の持続性にも関わる重要なテーマといえるでしょう。
困ったときは公正取引委員会へ相談を
委託事業者との取引で、
・価格協議に応じてもらえない
・代金が支払われない
・不当な扱いを受けている
など、「取適法に違反しているのでは」と感じた場合は、公正取引委員会の相談窓口を利用することができます。
相談した内容が委託事業者に知られることはありません。
また、委託事業者側も取引に関する疑問点を相談することが可能です。
公正取引委員会 相談窓口
フリーダイヤル:0120-060-110
受付時間:10:00~17:00(土日祝日・年末年始を除く)
最寄りの担当窓口につながります。
おわりに
今回の改正は、長年の商習慣にメスを入れるものであり、中小企業の取引環境を改善する一歩といえます。
ただし、制度ができただけで状況が一変するわけではありません。
現場での運用がどう変わるのか、価格交渉の実効性が本当に高まるのか。
今後の実態を注視していく必要がありそうです。
