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金価格の高騰と投資の出口

世界的なインフレ懸念や地政学リスクなどを背景に、金価格の上昇が続いています。

1月14日午前9時30分に田中貴金属が発表した店頭小売価格(1g)は26,051円となり、過去最高値を更新しました。

円安・ドル高が続くなか、ドル建てで取引される金は安全資産としての評価が高まり、価格は歴史的な高水準で推移しています。昨年7月に本ブログで金投資を取り上げた際は1万7,800円台でしたので、半年余りで約1.5倍に上昇した計算になります。

 

このような局面では、「今から買うべきか」だけでなく、「すでに保有している金をどう扱うか」、すなわち出口戦略を意識することが重要になります。

特に、ポートフォリオの一部として金投資を組み入れている場合、リバランスや手仕舞いの際に、現物とETF(上場投資信託)では税負担が大きく異なる点を押さえておく必要があります。

 

金投資の代表的な方法

金への投資方法は、大きく次の2つに分けられます。

 

・金の現物投資

金地金や純金積立など、実物の金を売買する方法。

・金ETF等への投資

株式市場を通じて、金価格に連動するETFを売買する方法。積立しやすいという点では金投資信託もありますが、一般的にコストはETFより高くなります。

 

価格変動という意味では似た動きをする両者ですが、税務上の取り扱いは大きく異なります。

 

金の現物を売却した場合の税金

金の現物を売却して得た利益は、通常「譲渡所得」として扱われます。

給与所得など他の所得と合算され、「総合課税」の対象となるため、税率は累進税率が適用されます。

 

保有期間によって区分が分かれ、所得金額の計算方法は次のとおりです。

 

・短期譲渡所得(保有期間5年以内)

譲渡価額 -(取得価額+譲渡費用)- 譲渡所得の特別控除50万円

 

・長期譲渡所得(保有期間5年超)

(譲渡価額 -(取得価額+譲渡費用)- 譲渡所得の特別控除50万円)÷2

 

領収書などの購入時の書類を紛失して取得価額が分からない場合は、「譲渡価額×5%」相当額が取得価額となりますので、書類の管理にはくれぐれも注意が必要です。

 

現物投資の大きな特徴は、年間50万円の特別控除が使える点です。

複数年に分けて売却するなど、利益が比較的小さい場合や、他に譲渡所得がない場合には、税負担を抑えられるケースもあります。

 

ただし、特別控除は、譲渡益が50万円以下の場合には、その譲渡益の金額までしか控除できません。

また、保有期間が短期と長期にまたがる場合には、まず短期譲渡所得から控除し、控除額が残る場合に限り長期譲渡所得から差し引きます。

 

さらに重要なのは、保有期間が「5年を超えている」場合には、上記の計算式のとおり、長期譲渡所得として所得金額が2分の1になる点です。

なお、金を相続により取得した場合は、被相続人の購入時期を引き継ぎます。

 

一方で注意点もあります。

仮に売却時に損失が出たとしても、総合課税の譲渡所得以外の所得と損益通算することはできません。株式や投資信託などの分離課税の譲渡所得との損益通算はできない点に注意が必要です。

 

なお、金地金等の売買事業者は、1回の取引で200万円を超える金額で買い取る場合に、売却者の住所・氏名・マイナンバーおよび取引内容を記載した支払調書を税務署に提出することが義務付けられています。

税務当局は支払調書のほか、さまざまな機会を通じて資料情報を収集しているため、200万円以下の取引であっても、取引の実態はほぼ捕捉されていると考えた方がよいでしょう。

 

金ETF等を売却した場合の税金

これに対して、金ETFや金投資信託の売却益は「上場株式等」に該当し、株式や投資信託と同様に「申告分離課税」の譲渡所得となります。

税率は一律で 20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税を含む) です。

 

金ETF等のメリットは、

・税率が一定で、所得水準に左右されない

・上場株式等に係る譲渡所得等の範囲内で損益通算が可能

・繰越控除が可能

といった点にあります。

特に、他の金融商品で損失が出ている年には、税務上の調整がしやすいといえるでしょう。

 

なお、国内で販売されている金ETFや金投資信託の多くは、NISA(少額投資非課税制度)の「成長投資枠」の対象となっています。

他の上場株式等と合算して、年間240万円の投資枠の範囲内で保有している限り、売却益等は非課税となります。

 

ただし、NISA口座で生じた損失については、課税口座(特定口座・一般口座)で生じた譲渡損益や配当所得との損益通算はできない点には注意が必要です。

 

税金だけではない「保有コスト」の違い

出口戦略を考える際には、税金だけでなく、保有コストにも目を向ける必要があります。

・金の現物

購入手数料や保管料など。自宅で保管する場合、保管料はかかりませんが、盗難リスクなどは別途考慮が必要です。

・金ETF・投資信託

売買手数料のほか、信託報酬などのランニングコストが継続的に発生します。

 

長期保有になればなるほど、このコスト差が効いてくる点も無視できません。

 

まとめ

金は「有事の資産」として注目されがちですが、実際の投資判断では、どのような手段で保有し、どのように売却するのかまで含めて考えることが大切です。

・少額・長期保有で、特別控除を活かしたいなら「現物」

・他の金融商品との損益通算や税率の明確さを重視するなら「ETF」等

といったように、出口戦略を意識した整理が欠かせません。

 

価格が大きく上昇している今、一度立ち止まり、「売るときに何が起きるのか」を冷静に整理しておくことが、結果的に投資全体の安定につながるのではないでしょうか。