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退職金課税の見直しは再び先送りへ

政府・与党は、2026年度税制改正で検討していた退職金に対する課税制度の見直しについて、日本経済新聞の報道によれば、今年も見送る方向とされます。議論が本格化した後の見送りは3年連続で、慎重姿勢は依然として強い印象があります。

 

背景には、制度変更によって働く人の税負担が増えるのではないかという懸念が根強いことがあります。退職金は老後生活を支える大きな支えとなるため、制度改正には広い理解が欠かせません。

 

現行制度の特徴と課題

現行の退職所得課税制度は、長く同じ会社に勤めるほど控除額が大きくなり、結果として税負担が軽くなる構造です。一方で、短期間で転職を重ねる人や早期に独立する人にとっては控除額が伸びにくく、相対的に不利になりやすい側面があります。

 

こうした構造は、

・旧来型の「終身雇用」を温存しやすい

・労働市場の流動性を高める改革が進みにくい

といった指摘にもつながっています。

 

政府は2023年の「骨太の方針」で制度見直しの方向性を明記しましたが、政治的な反発を招きやすいテーマでもあり、24年度以降は実質的に議論が停滞している状況です。

 

労働側の視点

制度の見直しをめぐっては、労働側も強い問題意識を持っています。今後、仮に制度改正の議論が再び進む場合でも、老後資金への影響を最小限にとどめるための十分な経過措置が不可欠です。

 

退職金は何十年も積み上げていく性質のものであり、「ルールが変わるなら前もって知りたい」「長期のキャリア設計に影響する」といった声は当然です。

 

働く人を代表する連合(日本労働組合総連合会)は、

・退職金は賃金の後払いであり、長年の勤労への報奨としての性格を持つ

・よって、制度変更によって不利益が生じることがあってはならない

という立場を示したうえで、多様な働き方に合わせた制度見直しそのものには反対していないものの、

見直す場合は「現行制度より退職所得控除額が減らないようにすべき」

と明確に述べています。

 

制度の公平性と、多様な働き方への対応をどう両立するか、議論の難しさを象徴する意見といえます。制度への理解を広げるためにも、政府にはより丁寧な説明と情報開示が求められます。

 

今後のポイント

制度設計次第では「サラリーマン増税」と受け止められる可能性があり、政治的なリスクが高いことが、見送りが続く背景にあると見られます。

 

とはいえ、課題が指摘されている以上、いずれは何らかの整理が必要になる可能性があります。その際には、

・長期勤続者だけでなく多様な働き方への配慮

・老後資金への影響を抑えるための十分な経過措置

・制度変更の目的と影響を丁寧に説明すること

といった点が欠かせません。

 

私たちはどう備えるか

退職金制度や税制は、今後の労働市場や働き方の変化と密接に関連しています。見直しの行方が不透明な今こそ、

・自分のキャリアの選択肢を広く捉えること

・老後資金を退職金だけに依存しない設計を進めること

・企業ごとの退職金制度や就業規則を把握しておくこと

がより重要になってきています。

 

金融リテラシーの観点からも、退職金制度の基本構造や税制の方向性を押さえておくことは、将来リスクを減らすうえで大きな意味があります。

 

おわりに

退職金課税の見直しが再び見送られたことは、現行制度の課題が棚上げされ続けるという懸念も残します。

一方で、働く人の負担に対する不安が強い中では、拙速な改革はかえって混乱を招きかねません。

 

今後の議論がどのように進むかは不透明ですが、丁寧な制度設計と広い理解形成が欠かせません。制度の行方を注視しつつ、私たち自身も長期的な生活設計を主体的に考えていくことが求められているように思います。