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金融所得を医療保険料へ反映? ─ 見直しの議論が本格化

厚生労働省は11月13日、金融所得を医療保険料や窓口負担へ反映する案について議論を開始しました。高齢化が進むなか、医療保険制度の持続性をどう確保するか。その一つとして、長らく課題とされてきた「金融所得と保険料の不公平」の是正が論点に上がっています。

 

なぜ今、金融所得の把握が問題になるのか

日本では、株式や投資信託、債券の利子・配当といった金融所得の多くが、確定申告をしなくても税金が完結する“申告不要制度”になっています。

この仕組み自体は便利ですが、一方で確定申告をしない場合は医療保険料の算定対象にならない扱いとなっています。

 

実際、厚生労働省によると、医療保険料の算定対象となるべき金融所得の 金額ベースで約9割が反映されていないとされています。

 

結果として、

・確定申告をして損益通算する人だけ保険料が増える

申告しなければ保険料は低くなる

という“逆転現象”が生じており、以前から不公平だと指摘されてきました。

では、なぜ今この問題が改めて取り上げられているのでしょうか。

 

高齢化で金融所得が増えたことも背景に

特に高齢者の金融資産は増加傾向にあり、生活のための収入を利子や配当などに頼る人も少なくありません。

 

こうした現状を踏まえ、厚生労働省は「不公平の是正に取り組む必要がある」と問題提起しました。

 

膨らむ高齢者医療費を支える現役世代の負担が重くなるなか、金融所得の扱いを見直すことで制度の公平性を高める狙いがあります。

 

金融所得を“確実に把握する仕組み”を検討

では、確定申告をしない金融所得をどう把握するのでしょうか。

 

今回示された案では、

・証券会社や銀行が国税庁に提出する「法定調書」を活用

・自治体など医療保険者が参照できる

・専用の「法定調書データベース(仮称)」を新設

という方向性が検討されています。

 

これにより、市町村や後期高齢者医療広域連合などが金融所得を把握し、保険料へ反映できる可能性が広がります。

こうした仕組みが導入されると、どの医療保険に影響が及ぶのでしょうか。

 

どの保険に影響するのか

金融所得の反映が議論されているのは、主に次の制度です。

 

・後期高齢者医療制度(75歳以上)

・国民健康保険(自営業者・無職など)

・介護保険(財務省の財政制度等審議会の分科会でも検討中)

 

これらはいずれも「所得に応じて保険料が決まる仕組み」ですが、現状では金融所得の大部分が反映されていません。まずは、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度から議論が進む見通しとされています。75歳以上は働き方による加入保険の差が生じないため、不公平感が生まれにくいと考えられているためです。続いて、自営業者などが加入する国民健康保険や介護保険への反映を検討する方向とされています。

 

一方で、会社員が加入する健康保険は対象外となる見通しです。労使折半で保険料を負担する仕組みのため、金融所得を反映させるハードルが高いとされているためですが、会社員と自営業者という働き方の違いによる不公平感は残る可能性があります。

 

なお、NISA口座での取引は算定対象から外す方向で検討されています。

 

政治の場でも議論が加速

自民党と日本維新の会も、11月12日の協議会で「金融所得を保険料に反映する方向」で一致したとされ、制度改正に向けた議論は与野党で進みつつあります。

厚労省は年内にも一定の方向性をまとめる予定で、今後の行方が注目されます。

 

考えられる今後のポイント

今回の議論は、金融所得課税そのものではなく、あくまで“医療保険料への反映”がテーマです。

 

とはいえ、次のような論点は今後注目されるでしょう。

・どこまでの金融所得を対象にするのか

(株や債券などの譲渡、配当、利子・投信売却益など)

・株式市場への影響をどう考えるか

・高齢者の負担増と、保険制度の公平性のバランス

・自治体が扱える情報量と、プライバシー保護の調整

・システム構築や事務負担の増加をどう抑えるか

 

特に75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、保険料上昇が家計に直結するため、慎重な制度設計が求められます。

 

以上のように、金融所得を医療保険料へどのように反映させるかについては、制度の公平性だけでなく、世代間の負担調整とも密接に関わるテーマです。

 

まとめ

金融所得を医療保険料に反映する議論は、

・制度の公平性を高めたい

・現役世代の負担をこれ以上重くしたくない

という大きな流れの中で始まったものです。

 

まだ方向性はこれから検討されますが、もし実現すれば、医療保険制度の在り方に一定の影響を与える可能性があります。

 

金融所得の扱いは、税制だけでなく社会保険の仕組みにも広がりつつあるテーマです。動向を追いながら、将来の制度変更に備えておきたいところです。

 

金融所得勘案方法のイメージ図
出所:厚生労働省HP〜第203回社会保障審議会医療保険部会 資料1-2〜