世界的な株高が続いています。世界的な投資マネーの流入と、人工知能(AI)が牽引する新たな成長期待が背景にあります。
一方で日本株に目を向けると、賃上げを起点としたインフレ定着への流れ、企業統治改革の進展、そして長らく停滞してきた国内政治の変化への期待といった「日本固有の追い風」が重なっています。かつて日本株を割安に放置してきた“ディスカウント要因”が徐々に解消されつつあり、海外投資家の視線も確実に集まっています。
10月末には日経平均株価が終値で初めて52,000円台に到達しました。
こうした株高の流れのなかで、思わぬ形で影響を受けるのが相続税です。株価の上昇により、相続財産の評価額が増加し、相続税の課税対象となる方が増えつつあります。
相続税評価額と、相続後に株式を売却する際に用いる取得費(取得価格)は、それぞれ異なる考え方です。税務相談の現場でも混同されることが多いテーマですので、ここで整理しておきましょう。
上場有価証券の相続税評価額
相続税の計算で用いる上場株式の評価額は、相続発生日(被相続人の死亡日)時点の株価をもとに、次の4つのうち最も低い価格を選択できます。
1. 相続発生日(被相続人の死亡日)の終値
2. 相続発生日の属する月の終値の月平均額
3. 相続発生日の属する月の前月の終値の月平均額
4. 相続発生日の属する月の前々月の終値の月平均額
株価は日々変動するため、最も低い価格を選べる点は、納税者にとって有利な仕組みといえます。
相続後に売却する際の「取得費」
一方で、相続した株式を売却する際の譲渡所得税を計算するときに用いる「取得費(取得価格)」は、相続税評価額とは異なります。
原則
被相続人がその株式を取得したときの価格を、そのまま引き継ぎます。
例外:取得費が不明な場合
被相続人の売買記録が残っておらず取得費がわからない場合は、売却金額の5%を取得費として計算できます。
(例:100万円で売却した場合 → 取得費5万円)
相続税額の取得費加算の特例
相続により取得した株式を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合には、「相続税額の取得費加算の特例」が適用できます。
これは、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度で、譲渡所得税の負担を軽減する効果があります。
なお、この特例を適用するには、確定申告で相続税の納付額を明示して計算する必要があります。自動的に反映されるものではありません。
NISA口座で保有していた株式の場合
被相続人がNISA口座で株式を保有していた場合、相続人のNISA口座には引き継げず、相続発生日の最終価額が取得費として評価され、相続人の課税口座へ移管されます。
NISAの非課税メリットは相続では引き継がれませんので、注意が必要です。
まとめ
上場株式の相続では、次の3点を整理しておきましょう。
・相続税評価額は「4つの基準日のうち最も低い株価」で評価
・売却時の取得費は「被相続人の取得価額(または5%ルール)」
・3年以内の売却では「取得費加算の特例」で税負担を軽減可能
株式相場の上昇は資産価値を押し上げますが、それに伴い相続税や譲渡所得税の負担にも影響が出てきます。
評価方法や特例を正しく理解し、「残す」「売る」それぞれの判断を税の観点から検討することが、今後ますます重要になっていくでしょう。