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東京一極集中と税収偏在の是正をめぐる議論

日本の財政をめぐって、「税収の偏在」が大きな課題となっています。特に、企業本社が集中する東京都には法人関係の税収が多く集まり、その結果、地方との間で住民サービスに格差が生じているとの指摘が絶えません。

 

地方側は「東京に税収が集まりすぎている」と不満を示し、一方で東京都は「地方交付税によって偏りはすでに調整されている」との立場をとっています。つまり、地方と東京の思惑が鋭く対立している状況です。

 

こうした状況を受け、総務省は7月から有識者検討会を設置し、税収偏在の原因分析を始めました。9月9日には検討会が開かれ、議論は着実に進んでいます。分析結果は11月ごろに取りまとめられる見通しで、その内容を踏まえ、是正策の必要性が協議されることになりそうです。

 

背景―なぜ税収は東京に偏るのか

税収偏在の最大の理由は、企業本社の立地が税収の帰属先を決める仕組みにあります。法人事業税や法人住民税は、企業の本社がある自治体に多く入る仕組みになっており、支社や工場が地方にあっても、税収の大半は本社のある東京に集まります。

 

さらに、東京は人口も多いため、所得税や消費税の面でも税収が厚くなる傾向があります。こうした構造が「東京一極集中」と「地方の疲弊」を財政面で一層浮き彫りにしています。

 

利子割をめぐる新たな偏在問題

最近では、ネット銀行の普及による「利子割(住民税)」の偏在も新たな課題として浮上しています。

利子割とは、金融機関が預金者に利子を支払う際に税を天引きし、その金融機関の所在地の都道府県に納める仕組みです。従来は全国に店舗を持つ銀行が主流だったため、各地域にバランスよく税収が配分されてきました。

 

しかし、実店舗を持たず東京都に本店を置くネット銀行が増えた結果、利子割の税収が東京に集中する傾向が強まっています。全国的に税収が減る中、東京都だけが増加しており、これは構造的な問題として今後も続くとみられます。

 

本来、利子収入は預金者の住所地に紐づけられるべきとの考えがあり、昨年12月の税制改正大綱を踏まえ、総務省は7月25日の有識者検討会で中間整理案を公表しました。

この案では、新たに「清算制度」を導入し、個人住民税のデータを基準に再配分を行う仕組みを設けるべきとの方向性を示しています。これにより、預金者が全国に分布しているにもかかわらず、ネット銀行の本店所在地に税収が偏る現状を是正しようとしているのです。

 

2026年度の税制改正では、この中間整理を踏まえ、具体的な算定方式や分配ルールが固められることが期待されています。

 

地方創生政策との連動

税収の再配分は、単なる財源調整にとどまりません。地方に安定した税収基盤を確保することは、雇用創出や社会インフラ整備を支える土台となり、人口減少対策や地域経済の持続性にも直結します。

 

つまり、税収偏在の是正は「地方創生」政策と深く結びついており、財政調整の議論を超えて「地域社会の未来をどう描くか」という大きなテーマに広がっていきます。

 

まとめ

税収の偏在は、法人課税や利子課税など複数の側面から表れています。今後の総務省の議論が、地方の暮らしやすさや東京への過度な人口集中の是正といった課題と連動できるのかどうか。まさに「地方創生」の成否に直結する重要なテーマになりそうです。