免税制度見直しの議論が浮上
訪日外国人が日本国内で商品を購入する際、一定の条件を満たせば消費税が免除される「免税制度」。これを原則廃止するべきだという提言が、自民党の有志議員らによる勉強会でまとめられ、来年度の税制改正に向けて議論の俎上に載っています。
背景には、物価高への対応を競い合う中で「有権者への新たな負担は避けたい」という思惑があります。その代わりに、反発を受けにくい訪日外国人に税負担を求めることで、財源を確保しようという狙いです。試算では制度廃止により約2,000億円の増収につながると見込まれています。
廃止論の根拠と対策案
提言では、外国人観光客による高級ブランド品購入を税制で後押しすることへの疑問が示されました。さらに、免税品を大量購入して転売し、不正に利益を得るケースも後を絶たないことから、制度の公平性や透明性に問題があると指摘されています。
ただし、地域振興への配慮として、地方空港や港の出国エリアに設置される免税店での購入には、負担軽減策を講じることも併せて求められています。
業界の反発と制度の見直し方針
これに対し、日本チェーンドラッグストア協会などは強く反対しています。というのも、政府はすでに2026年11月から「リファンド方式」(購入時は税込みで支払い、出国時に消費税を払い戻す方式)へと移行する方針を決定済みだからです。業界団体もその制度設計に協力してきた経緯があり、拙速な廃止は現場に混乱を招きかねません。
海外の事例に学ぶ
海外でも同様の動きがあります。英国はEU離脱後の2020年に外国人観光客への付加価値税免除を廃止しました。その結果、免税を前提にしていた高級ブランド店などで売り上げが落ちたとの見方が出ています。日本でも同様に小売業を中心にマイナスの影響が懸念されています。
観光課税をめぐる広がる議論
一方で、オーバーツーリズムを背景に、観光客に対して税負担を求める動きは世界的に広がっています。日本でもすでに「宿泊税」や「出国税」が導入されており、今後は諸外国並みに税負担を引き上げるべきだという意見も強まっています。
免税制度廃止や観光課税強化は、税収増や不正防止といったプラス面がある一方、外国人観光客の減少や小売業の打撃といったマイナス面も抱えています。ただし、宿泊・飲食サービス業の人手不足やオーバーツーリズムによるサービスの質の低下を抑制できるという側面もあり、観光立国としての持続可能性を考える上で、検討に値するテーマといえるでしょう。
消費税免税制度をめぐる議論は、観光立国としての未来像をどう描くのかにつながります。税収確保とインバウンド需要の維持、そのバランスをどう取るのか―今後の議論に注目したいところです。