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「社縁社会」の崩壊と黒字リストラの時代

かつての日本社会は「社縁社会」と呼ばれるものに支えられていました。会社に入れば終身雇用と年功序列の仕組みに守られ、社員は定年まで勤め上げ、会社もまた社員の生活を面倒見る。企業と社員の間には、単なる雇用契約を超えた「縁」が存在していたのです。

 

しかし1990年代のバブル崩壊を境に、その関係は大きく変わりました。企業は経営の安定を優先し、早期退職を募りながら「これからは自分のことは自分で考えてくれ」と社員に突き放すような姿勢を見せ始めました。社縁社会の崩壊です。

 

「黒字リストラ」という経営判断

近年では、業績が好調でありながら人員削減を行う、いわゆる「黒字リストラ」が増えています。赤字になる前に先手を打つ―これは企業から見れば健全な経営判断ともいえます。しかし、長期的には企業が期待するような効果は得られず、再びリストラを行うケースが圧倒的に多いと言われます。

 

実際に、2025年には早期退職者が1万人を突破し、前年を上回っています。管理職年代を中心とした削減が目立つなど、数字にもその傾向が表れています。

 

背景には、単なる人員削減にとどまらず、組織全体の世代交代や人材ポートフォリオの再編などの目的もあります。一方で、社員ばかりにリストラを迫るのではなく、経営責任を果たす役員自身の交代を求める声も根強く存在します。

 

人員構成と次世代への継承

黒字リストラの理由の一つは人員構成の偏りです。多くの企業では年齢層が高く、世代交代が進みにくいという課題があります。年功序列を廃止し、人件費を抑えると同時に、若手やデジタル・グローバル人材の獲得・育成へシフトする動きも加速しています。

 

さらに、AIやデジタル化の進展により、従来の管理職世代の役割が相対的に小さくなっていることも、早期退職募集が相次ぐ一因といわれます。ただし、その過程で優秀な経験者を失うリスクも無視できません。長年培った知識やネットワークは簡単には若手に置き換えられないからです。

 

「70歳定年法」と人件費負担

国が主導する「70歳定年法」については、まだ確定していませんが、過去の経緯からも、努力義務から法的義務化へ移行する可能性は高いと考えられます。社員にとっては安心材料となる一方、企業にとっては人件費負担がますます重くなる現実があります。こうした環境の中で、経営と雇用のあり方をどうバランスさせるのかが大きな課題です。

 

また、企業から提示される退職金の上乗せや再就職支援といった条件も、受け取る側の年代や家計状況によって意味合いが大きく変わります。定年前に予期せずキャリアを選択する場合は、退職条件だけでなく、生活設計や再就職の可能性、健康状態や家族の状況も含めて総合的に判断することが求められます。

 

金融リテラシーと老後資金の備え

こうした状況を踏まえると、いざというときに選択肢を広げられるよう、普段から金融リテラシーを高め、老後資金の形成や資産管理を意識しておくことがますます重要です。

 

「自分の働き方やキャリアをどう選択するのか」とともに、老後資金をどのように準備していくのか、どの程度の金融リテラシーを身につけるのかという課題に直結します。

 

かつての「会社が守ってくれる社会」は過去のものとなり、いまや「会社と個人は対等な契約関係」という現実が前面に出ています。黒字リストラの広がりは、その象徴といえるでしょう。