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ガソリン税の暫定税率廃止の行方をどう見るか

ガソリン代の高さが家計の負担となる中、関心が集まるのが「ガソリン税の暫定税率廃止」です。実際にガソリン代がどれだけ下がるのか、さらに他の税制への影響はどうなるのか―ドライバーや家庭に直結するテーマです。

 

暫定税率がなくなるとどうなる?

暫定税率は、もともと「時限的」な形で上乗せされてきた税金ですが、今も続いています。仮に廃止となれば、1リットルあたり25円程度ガソリン代が安くなる計算です。日々クルマを使う人にとっては決して小さくない負担減となります。

 

与野党協議の現状

本日、5回目となる自民党や立憲民主党など6党による実務者協議が開かれました。野党側は、11月からの廃止を実現するため、与党側に財源案を具体的に示すよう改めて求めましたが、与党側は、税財源を充てるべきかどうかをめぐって野党側の認識が一致していないとして応じませんでした。

 

ガソリンと同じく暫定税率がある軽油の扱いについても議論はありますが、合意までの道のりは平坦ではなさそうです。自民党で党内対立も続くため、議論の行方は不透明です。

 

毎年12月に決まる「税制改正大綱」は翌年の税制を方向づけるものですが、ガソリン税をめぐる攻防や与野党の調整が長引けば、法人税や金融所得課税、退職金課税といった他のテーマにも悪影響が及びかねません。結果として、私たちの生活や家計に直結する税制の見通しが不透明になる可能性があります。

 

家計にはプラスだが、脱炭素には逆行

ガソリン税の暫定税率が廃止されれば、確かに家計にはプラスとなります。ガソリン価格の下落は生活費全般に波及し、物価高対策としては歓迎されるでしょう。

 

一方で、価格を下げることは需要を下支えすることになり、脱炭素社会を目指す流れに逆行する課題もあります。

 

補助金の限界と財政負担

政府はこれまでガソリンをはじめとする燃料補助に累計8兆円超の予算を投じてきました。補助は家計の負担を和らげる効果がありますが、市場の価格形成をゆがめるうえ、財政負担も大きく、やはり脱炭素の流れにも反するものです。

 

ガソリン税の暫定税率廃止とガソリン補助金のどちらも財源の問題を抱えていますが、こうした補助を続けるよりも、暫定税率そのものをやめる形で負担軽減を図る方が筋が通っている、という考え方もあります。

 

賢い税金の使い方が問われている

暫定税率廃止も補助金も、それぞれにメリットと課題があります。大切なのは「どこに税金を振り向けるのが社会全体として合理的か」という視点です。

 

そういう意味では、暫定税率廃止や補助金という直接的な手段だけでなく、財政健全化や一律給付のバラマキ批判も考慮すると、低所得層に限定した給付金のほうが効果的かもしれません。

 

物価抑制の効果と脱炭素という難しいバランスの中で、政治の意思決定が試されており、賢い税金の使い方を見極めていく必要がありそうです。