金の価格が過去最高値を更新しています。2025年7月23日午前9時30分に田中貴金属が発表した小売価格(1g)は17,875円(為替T.T.S.146.91円午前9:35現在)。年初の13,000円台から大幅に上昇し、かつてない高値圏に達しています。
25年前の水準から20倍へ
田中貴金属によれば、1999年当時の金価格は1gあたり917円(為替T.T.S.114.95円)。そこから四半世紀を経て、金価格は20倍近くにまで上昇しました。この間には、世界金融危機、コロナショック、地政学的リスクの拡大など、世界的な不安材料が続き、「実物資産」である金が繰り返し見直されてきました。
為替要因だけでは説明できない価格上昇
2025年7月23日の為替レートはT.T.S.ベースで146円台と、1999年に比べて大幅な円安となっています。円建ての金価格上昇には為替の影響も無視できませんが、今回の高騰はそれだけでは説明できません。根本的には金そのものに対する需要の強まりが背景にあると見られます。
中央銀行による金買いと「ドル離れ」
近年、金の需要を牽引しているのが各国の中央銀行、特に中国やロシアをはじめとする新興国です。これらの国々は、地政学リスクの高まりや経済制裁への備えとして、米ドルへの依存を減らし、外貨準備の一部を金に振り替える動きを強めています。
準備資産としての金の保有が拡大する中、国際決済における「ドル離れ」が徐々に進行していますが、基軸通貨としてのドルに代替する通貨は今のところ見当たりません。金が「価値保存手段」としての地位を高めつつあります。
ビットコインも同じ潮流の中に
ビットコインの価格も同様に上昇傾向を示しており、その背景にはドルの信認低下や、金融・地政学リスクの高まりがあるとみられます。既存の金融システムや国家制度に依存しない資産への“逃避”需要が背景にあるとも考えられます。
金とビットコインという異なる資産クラスに共通しているのは、「不確実性の高い時代」において、投資家が価値の保存手段として求めているという点です。
金とビットコインはどちらも「非中央集権的な資産」として注目されますが、根本的な違いがあります。金は物理的な希少性と長い歴史に裏打ちされた信頼があり、宝飾品や工業用途といった実需も存在します。
一方でビットコインは、デジタル空間にのみ存在し、価格変動が激しく、法制度の整備も国ごとに異なります。特に、価値保存手段としての信頼性は今後の規制や社会的受容度に大きく左右されるため、金と比べて依然として不確実性が高い点には留意が必要です。
金は「守る」資産としての役割を果たすか
金は配当や利息を生まないため、「増やす」資産ではなく「守る」資産として位置づけられます。インフレや金融不安が進行する局面では、資産価値を保全する「安全資産」としての役割を果たすことが期待されます。
足元の上昇は一時的な投機的熱狂というよりも、世界経済の構造変化を映し出した、より長期的なトレンドの一環と見ることもできます。今後も価格変動はあるものの、短期的な値動きに翻弄されるのではなく、「資産の一部を実物に振り分けておく」という視点での活用が、ますます現実的な選択肢になっているのかもしれません。