
2025年4月から、「預貯金口座管理制度」が始まりました。
この制度は、預貯金者の意思に基づき、マイナンバーを活用して複数の金融機関の口座情報を一元的に管理できるようにする仕組みです。
これにより、相続や災害時における口座の把握や手続きが格段にしやすくなります。
制度の概要
本制度では、預貯金者本人の申し出により、マイナンバーを預貯金口座に「付番」することが可能になります。
対象は預貯金口座を取り扱う全ての金融機関ですが、一部手続きの対象外となる金融機関があります。詳しくは一部手続きの対象外となる金融機関をご覧ください。
マイナポータルを通じた登録や、一度に複数の金融機関の口座をまとめて付番できる仕組みも整備されており、利便性が高まっています。
登録には、マイナンバーカードや本人特定事項(氏名・住所・生年月日)を確認できる書類が必要です。
また、口座開設などの際には、金融機関が預貯金者に対し、マイナンバーの利用について希望の有無を確認することが義務付けられています。
なお、金融機関への届出は任意であり、届け出をしたからといって、預貯金残高などの情報が国に報告されることはありません。
国が口座情報を把握できるのは、これまでどおり、法律に基づく社会保障の資力調査や税務調査など、限られた場合に限られます。
また、付番する金融機関を選ぶことはできますが、同一金融機関内の口座を個別に選んで付番することはできません。
さらに、金融機関側の管理状況によっては、休眠口座など一部の口座が付番対象外となる場合もあります。
制度を利用する際には、こうした点も事前に確認しておくことが大切です。
活用場面
この制度の大きな利点の一つが、相続時や災害時に口座情報を把握しやすくなることです。
たとえば、被相続人が生前に本制度を利用していれば、相続人はどの金融機関に口座があるかを簡単に把握できるようになります。
相続人が1つの金融機関に照会を行うことで、預金保険機構が他の金融機関に対しても情報提供を行い、口座情報を一括で通知する仕組みが整備されています。
具体的には、金融機関が預貯金者の本人特定事項およびマイナンバーを預金保険機構に通知し、預金保険機構から他の金融機関へと情報が共有されます。
これにより、各金融機関が預貯金者の情報をマイナンバーで検索・管理できる体制が整います。
結果として、相続財産調査の負担軽減や口座の見落とし防止につながり、より確実な資産承継が可能になります。
また、災害時に通帳やキャッシュカードを紛失した場合でも、あらかじめマイナンバーを付番していれば、任意の金融機関を通じて照会を行い、付番済み口座の所在を確認することができます。
ただし、マイナポータル経由での相続時照会や災害時照会の申込みはできません。
なお、「公金受取口座登録制度」との混同には注意が必要です。公金受取口座登録制度は、給付金などを受け取るために国に口座情報を登録する制度であり、今回の預貯金口座管理制度とは目的も仕組みも異なります。
預貯金口座管理制度では、国に直接口座情報を届け出るものではなく、あくまで本人の意思に基づき、金融機関と情報をひも付ける仕組みとなっています。
また、一度マイナンバーを付番した口座については、原則として取り消すことはできません。
将来の相続や災害への備えを視野に入れ、制度利用は慎重に検討する必要があります。
まとめ
預貯金口座管理制度は、個人の選択に基づき、マイナンバーを活用して複数の口座を一括で管理・把握できる仕組みです。
将来的な相続手続きや災害時への備えとして、事前に制度を利用しておくことで、大きな安心を得ることができるでしょう。
制度の内容や対象口座の範囲、取り消しができない点などの注意事項を正しく理解したうえで、ご自身やご家族の資産を適切に守る手段として、必要に応じて活用をご検討ください。