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相続手続きの負担を軽減する「法定相続情報証明制度」とは

法定相続情報証明制度のポンチ絵
出所:法務省HP〜「法定相続情報証明制度」について〜

 法定相続情報証明制度」は、そうした煩雑な手続きを簡略化できる制度です。

 

 多くの方が利用している一方で、税務相談の場では意外と知られていないこともありますので、今回はこの制度の概要と活用方法をご紹介します。

 

法定相続情報証明制度とは

 この制度では、相続人が必要書類を法務局(登記所)に提出することで、登記官が内容を確認し、相続関係を証明する「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。

 

 一覧図には、被相続人と相続人の氏名、住所、生年月日、続柄などが記載されており、いわば相続関係を示す簡易な家系図のようなものです。

 

 これは、原本の戸籍書類一式の代わりとして、相続登記や銀行での預金払戻し、相続税の申告など、さまざまな場面で利用できます。

 

 交付された一覧図の写しは無料で、必要な枚数だけ取得可能です。これにより、複数の法務局や金融機関に個別に戸籍の束を提出する手間が省け、手続きが格段にスムーズになります。

 

相続登記の義務化と本制度の活用

 2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した場合には、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務化されました。

 

 不動産が複数の法務局の管轄にまたがっている場合、それぞれの法務局に戸除籍謄本を提出する必要があります。

 

 しかし、法定相続情報一覧図の写しを使えば、各法務局で共通の書類として利用できるため、手間もコストも大きく削減されます。

 

制度創設の背景と目的

 相続登記がされずに放置されたままの土地が増加し、それが「所有者不明土地問題」や「空き家問題」の要因のひとつとされています。

 

 こうした問題に対応するため、法務省は相続登記を促進する施策として、2017年5月29日に本制度の運用を開始しました。

 

 法定相続情報一覧図の活用により、相続人と手続き担当部署の双方の事務負担が軽減されます。

 

 また、制度の利用を通じて、登記官から相続登記のメリットや、登記を放置することのリスクについて説明を受ける機会が生まれ、相続登記の重要性に対する理解が深まることも期待されています。

 

申出に関する実務ポイント

 この制度は、不動産の有無にかかわらず利用できます(たとえば、遺産が預貯金のみの場合でも申出可能です)。

 

申出ができる人

・被相続人の相続人(相続人の地位を承継した者も含む)

 

代理人になれる人

・法定代理人

・民法上の親族

・資格者代理人(弁護士、司法書士、税理士など)

 

申出先となる登記所

 以下のいずれかの管轄登記所に申出可能です。

・被相続人の本籍地

被相続人の最後の住所地

・申出人の住所地

・被相続人名義の不動産の所在地

 なお、申出は郵送でも受け付けています。

 

最後に

 相続手続きは、残されたご家族にとって大きな精神的・事務的負担となりがちです。法定相続情報証明制度は、その負担を軽減するために整備された有用な制度です。

 

 相続登記の義務化が始まった今こそ、制度を正しく理解し、活用することが大切です。

 知らないことで余計な手間や費用がかかってしまうことのないよう、ぜひこの機会に一度、制度の利用をご検討ください。

 

 詳しい内容は法務省のホームページ「法定相続情報証明制度」についてをご覧ください。