
毎年届く「ねんきん定期便」の様式が、2025年度送付分から少し変わることになりました。
厚生労働省は、今年4月1日、「ねんきん定期便」の新しい様式(サンプル)と見方ガイドを公表しました。
今回の変更点のひとつが、厚生年金保険料における「事業主負担」の記載です。
これまでの「ねんきん定期便」では、本人が負担した厚生年金保険料だけが表示されていました。そのため、実態とのズレを指摘する声がありました。たとえば、SNSなどでは
「事業主負担分はどこにいったのか?」
「実際の負担額より年金が多く見えているのでは?」
といった指摘があがっていました。
これに対応する形で、令和7年度版では、裏面に次のような説明が加わります。
【令和7年度「ねんきん定期便」記載内容(抜粋)】
厚生年金保険料は、被保険者と事業主が折半して負担することとされています。
「ねんきん定期便」ではご本人の納付実績として被保険者負担分の保険料納付額を記載しており、お手持ちの給与明細等に記載されている保険料額で確認ができます。
このほか、事業主も同額を負担しています。
この一文が加わることで、実際には本人負担分と同額を会社(事業主)も負担して成り立っているという事実が明確になります。
たとえば、厚生年金の保険料は、月収に応じて18.3%の料率をかけた金額を労使折半して支払っています。
上限にあたる月収65万円相当の方の場合、労使合わせて月11.8万円(本人負担は月5.9万円)もの保険料が納められている計算です。
本人負担だけを見ていると「支払った金額に対して、年金は意外と多くもらえるな」という印象になりがちですが、事業主負担も含めて考えると、実際にはより多くの保険料が年金財源に充てられていることがわかります。
そもそも「ねんきん定期便」は、2009年4月から導入されました。当時、「消えた年金問題」として、納めた保険料の記録が確認できない事態が社会問題化したことを受け、加入者自身が納付記録をチェックできる仕組みとしてスタートしたものです。
毎年の誕生月に送付され、年金の加入記録や、将来受け取れる年金額の目安などを知らせてくれます。
その後もレイアウトや文言の見直しが重ねられてきましたが、これまでは「事業主負担」に関する説明はありませんでした。
今回、あらためて明示されることになったのは、受給者側の理解をより正確に深めるためと言えそうです。
最後に
年金に対するイメージは、こうした「見せ方」ひとつで大きく変わることがあります。
自分自身が支払った金額だけでなく、事業主も同じだけ負担しているということを意識しながら、老後に向けた資産形成を考えていきたいものです。