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退職金は国民健康保険料に影響する?

確定申告期間ですので、退職所得に関する間違えやすいポイントをご紹介します。

 

退職所得とは

退職所得とは、退職により勤務先から支払われる退職手当などの所得をいいます。

これには、社会保険制度などに基づいて退職に起因して支給される一時金、確定拠出年金法に基づく企業型年金規約または個人型年金規約により老齢給付金として支給される一時金なども含まれます。

 

また、労働基準法第20条に基づく解雇予告手当や、賃金の支払の確保等に関する法律第7条に基づき退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も、退職所得に該当するとされています。

 

退職所得の申告と課税

退職所得については、退職金の支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出していれば、所得税等や住民税は源泉徴収又は特別徴収により課税が済む(分離課税)ことになりますので、原則として確定申告をする必要はありません。

 

ただし、年末調整が未済の場合や、医療費控除、寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額も確定申告に含める必要があります。

 

また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職金の収入金額から一律20.42%の所得税等が源泉徴収されるため、確定申告により精算する必要があります。

 

退職金は、長年の勤労に対する報奨的性格をもつ一時金であることから、退職所得控除や分離課税の制度などにより税負担が軽減される仕組みとなっています。なお、退職所得についても源泉徴収票が交付されます。

 

退職所得の計算方法

退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。

(収入金額(源泉徴収前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

 

退職所得控除額とは、勤続20年以下の部分は1年あたり40万円、20年超の部分は1年あたり70万円で、1年未満の端数は切り上げて1年として計算します。

 

国民健康保険料への影響は?

医療費控除や寄附金控除などの適用を受けるために確定申告を行う際、退職所得の金額も含めて申告する必要があります。その場合、「国民健康保険料が増えるのではないか」との懸念が生じます。

 

しかし、退職所得の金額も含めて確定申告を行なった場合でも、国民健康保険料を計算する際の総所得金額等や算定基礎額には含まれません。

 

したがって、退職金を一時金で受け取る限り、国民健康保険料には影響しません。

 

ただし、退職金を年金形式で受け取る場合には「公的年金等」に該当し、「雑所得」として保険料算定の基礎に含まれることがありますので注意が必要です。

 

配当所得・譲渡所得と保険料への影響

なお、上場株式等に係る配当所得等及び特定口座による上場株式等に係る譲渡所得等について、申告不要制度を選択した場合、配当所得や譲渡益は国民健康保険料を計算する際の総所得金額等に含まれません。 

 

しかし、確定申告を行った場合には、これらの所得も「総所得金額等」として扱われるため、保険料の算定に影響を及ぼすことになります。

 

相続による退職金は?

被相続人の死亡後3年以内に支払が確定した退職金が相続人に支払われた場合、その退職金は所得税ではなく相続税の課税対象となります。

 

この場合、相続人が取得した退職金のうち、〔500万円 × 法定相続人の数〕を超える部分が課税対象となります。