2024年度税制改正では、納税環境整備の一環として、更正の請求に係る仮装隠蔽行為に対する重加算税制度の整備が行われました 。
現行制度では、仮装隠蔽が行われている「納税申告書」を提出した場合は重加算税の対象となりますが、納税者が申告後に税額の減額を求めることができる「更正請求書」の場合は「納税申告書」ではないため、仮装隠蔽があったとしても重加算税を賦課できません。
そのため確定申告の段階では適正に作成・申告し、更正の請求において仮装隠蔽を行うことで、重加算税のリスクを回避する事例が把握されています。
「納税申告書の提出(税額を確定させるための手続)」か「更正請求書の提出(税額を減額させるための手続)」といった、税務当局に対する手続の性質により、仮装隠蔽行為が行われた場合のペナルティの水準が異なるのは、納税義務違反の発生の防止という重加算税の趣旨に照らして適切ではなく、更正の請求に係る仮装隠蔽行為を未然に抑止する必要があるとの議論がありました。
こうした問題提起に対応していくため、仮装隠蔽したところに基づき「更正請求書」を提出した場合も重加算税の賦課対象に加えることとされました。
具体的には、2025年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される予定です。
近年増加している事例としては、実態のない医療費に係る所得控除等の更正の請求など、比較的少額のものが大量に発生しているようですが、信じられないことに、その手口がSNS等で広く拡散されているようです。
また、法人税の事例では申告後、外注費の計上漏れを理由とした更正の請求を行い、それに基づく還付金を受領していたものも把握されています。
更正の請求には外注費に係る領収書等が添付されていましたが、その後の実地調査における反面調査を行ったところ、架空の領収書等を作成していたものであることが判明しました。
添付された領収書等は、印紙貼付、取引先の社判を模造して使用するなど巧妙に外形が整えられていたようです。
一般論として、更正請求書が提出された場合には、その内容を税務署や国税局は調査しますが、その深度は事案によります。
更正の請求の理由が疑わしい場合には実地調査、必要に応じて反面調査も実施したりするケースがあります。
罰則規定の厳格な適用を考えると、医療費控除をめぐる不正というレベルでは適用が難しいのかもしれませんが、誠実に納税を行う納税者の税に対する公平感を損なうことがないよう、しっかり調査を行って仮装隠蔽の事実があった場合には、減額更正処分が行われないようにすることを期待したいです。
また、消費税(地方消費税)の不正受還付犯(未遂犯を含む。)の対象に、「偽りその他不正の行為による更正の請求に基づく還付」を加えることとされました。
消費税法は、「偽りその他不正の行為により」還付を受けた者を10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処する旨を規定するとともに、この未遂、すなわち、還付を受けずとも申告書を提出した段階において罰する旨も規定しています。
ここでいう「偽りその他不正の行為」は、国税通則法、所得税法及び法人税法において用いられているそれと同義であるとされています。
これまでは、納税者が偽りその他不正の行為に基づき更正請求書を提出していたときには、罰則を科すことができませんでした。
しかしながら、納税申告書と同様に罰則の対象とすることが必要であるとの議論がありました。
具体的には、法律の公布の日から起算して10日を経過した日以後にした違反行為について適用するとされています。