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TOB成立後の上場廃止銘柄、申告漏れに注意

2023年6月の国税庁の報道発表資料
出所:国税庁HP〜2023年6月の報道発表資料〜

 TOBに応募した株式が源泉徴収ありの特定口座の株式の場合は、特定口座内で損益計算されるので確定申告は不要です。

 

 しかし、TOB成立後、上場廃止となった株式をTOBによる買付者などに買い取られた場合で、譲渡益が生じたときには、所得税の申告が必要になります。

 

 この場合には、上場株式の譲渡ではなく、証券会社を通さない相対取引となるため、特定口座内での損益計算はされず、また、他の上場株式の譲渡所得との損益通算や繰越控除ができません。 

 

 近年、TOBの買付総額が高額なものもあり、上場廃止後の株式譲渡に係る申告漏れの増加が懸念されたことから、国税庁がサンプル調査等を実施したところ、申告漏れとなっているケースが多数把握されています。


 

 調査等により申告漏れが把握された事例の中には、1億円を超える多額の譲渡益が生じていたにもかかわらず、無申告となっていたものが含まれていました。

 また、報道によれば、上場廃止となったNTTドコモの個人投資家が、申告漏れを相次いで指摘されています。

 

 上場廃止となった株式をTOBによる買付者などに買い取られた方は、申告漏れがないか確認してください。 

 なお、株式の取得費等については、その株式の購入時の取引明細や、購入した証券会社などで確認することができます。


 

 国税庁では、申告が必要と見込まれるにもかかわらず、無申告となっている方に対して、 今後、積極的に調査等を行うなど、適切に対応していくとしています。

 

 資本コスト経営の圧力やM&Aの活発化などが背景にあると考えられますが、上場廃止案件は今後も増える可能性があります。TOBを経て上場廃止になった株式も特定口座やNISA口座で扱えるようにするなど制度改正も求められますが、それまでは投資家自身がしっかりと確認・申告する必要があります。