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配当所得等の課税特例の見直し

上場株式等の配当等の課税関係のフローチャート
出所:国税庁HP〜上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度〜

 2022年度税制改正で、上場株式等に係る配当所得等の課税の特例が見直されました。

 

 この見直しは、今年の確定申告(2023年10月1日以後に支払を受けるもの)から適用されますので、そのポイントと注意点についてご紹介します。

 

 上場株式等の配当所得等の取り扱いについては、総合課税・申告分離・申告不要の選択を行うことができます(図表参照)。

 

 この制度のことを上場株式等に係る配当所得等の課税特例といいます。

 

 しかし、大口株主等(持株割合3%以上の個人株主)については、その支配的性質に着目し、総合課税(累進税率5%~45%)しか選択できません。

 

 これを回避するため、個人の持株割合を3%未満とした上で、支配下の同族会社を通じて持株割合が実質的に3%以上となっているにもかかわらず分離課税・申告不要とする例が散見されました。

 

 これは、課税の公平性が保たれていないと会計検査院から指摘されていました。 

 

大口株主等の範囲拡大

 そこで、 大口株主等の定義を見直し、持株割合が個人として3%未満でも支配関係を持つ同族会社が保有する株式を含めて3%以上となる場合も該当することとされました。

 

 ここでいう同族会社とは、法人税法上の同族会社と同義で、会社の株主等の3人以下ならびにこれらと特殊の関係のある個人および法人が、その会社の発行済株式等の50%を超える会社をいいます。

 

 この見直しは、上場企業等の株主が資産管理会社を利用して自身の持株割合を下げ、総合課税を免れるという節税策を阻止する目的があるといわれています。

 

 さらに、上場株式等の配当等の支払をする内国法人には、配当基準日において持株割合が1%以上となる個人の氏名、個人番号、保有割合などを記載した報告書を支払確定日から1か月以内にその内国法人の本店の所轄税務署長に提出すべき義務が課せられました。

 

まとめ

 この見直しにより、個人株主と同族会社の保有株式数を合算して持株割合が3%以上になると、総合課税による確定申告が必要になります。

 

 また、総合課税による申告では、配当控除は適用されますが、上場株式等の譲渡損失は通算できません。

 そのため、税負担が増える可能性があります。

 

 今後は、個人が保有する株式数だけでなく、同族会社が保有する株式数も確認する必要がありますので、ご注意ください。