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iDeCoの受取方法

 iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金の一つの柱として注目されています。しかし、iDeCoを受け取る方法については、よく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、iDeCoの受取方法とそのメリット・デメリットについてご紹介します。 

 

 iDeCoの受取方法は、一括でもらう一時金、分割して受け取る年金、一時金と年金の併用の3つです。それぞれにメリットとデメリットがあります。

 

 一時金は、退職金として一括で受け取ります。掛金を支払った期間に応じて退職所得控除が適用されるので、税金の負担を軽減できます。このメリットから、すでに受け取りを開始されている人の多くが一時金を選択しています。

 

 ただし、iDeCoを受け取る前に、過去19年以内に他の退職金を受け取っている場合は、退職所得控除を重複して利用できないことに注意が必要です。

 

 2022年4月に確定拠出年金の一時金受取期間が5年延長され、75歳までとなりました。これに伴い、確定拠出年金を一時金で受け取る以前「19年以内」に退職金を受け取っていた場合、雇用期間と確定拠出年金の加入期間の重複部分は退職所得控除額が減額されるようになりました。

 

 つまり、定年60歳で退職金を受け取り、運用期限である75歳で確定拠出年金の一時金を受け取るような通常考え得るケースでも、退職所得控除は満額適用されません。

 

 また、一時金を受け取った後は、5年後に他の退職金を受け取ると再び退職所得控除が使えます。このようにiDeCoと他の退職金を受け取る順番によって税負担が変わります。

 

 年金は、毎月決まった額を受け取ります。厚生年金や国民年金と同じように、公的年金等控除が適用されます。メリットは、定期的に決まった金額を受け取れることで、公的年金の受給開始時期を遅らせることができることです。これにより、毎月の公的年金の額を増やせます。

 

 しかし、口座管理手数料や給付手数料が毎月発生することや、退職所得控除が適用されないことから税金が増えることがデメリットです。また、国民健康保険料が高くなる可能性もあります。

 

 一時金と年金の併用は、一時金と年金のメリットとデメリットをバランスよく享受できる方法です。自分のライフスタイルや資産状況に合わせて、一時金と年金の割合を調整できます。

  

 厚生労働省によると、退職金については、約7割の人が定年時の60歳、約2割の人が65歳の時に受け取っています。また、公的年金については、ほとんどの人が原則の65歳から受給しており、繰上げ受給や繰下げ受給している人は非常に少数です。

 

 退職所得課税を巡っては、政府が6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「見直しを行う」と明記していましたが、2024年度税制改正では見送られました。経過措置の導入など制度設計に時間がかかるため、2025年以降に年金制度と一体で見直す予定です。

 

 iDeCoの出口戦略では、受取方法によって税金や手数料などの負担が異なります。老後資金を計画する際には、自分に最適な受取方法を選ぶことが大切です。